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(風紀委員長視点)



風紀委員の一人から連絡を受けて食堂へ向かう。また転校生がなにかやらかしたらしい。苛々する、しかし風紀委員長として行かなければいけない。・・・くそ、陸を誘って夕飯食べようと思ってたのに。こうなりゃ罰則重くしてやる・・・ああでも同室が稜だから通常通りじゃなきゃ駄目か。

なんて内心考えて、いつのまにかついた食堂の様子に首を傾げる。騒ぎが起こってるにしてはやけに静かにざわめいてンな・・・。
困惑した様子の生徒達、その全員の視線が集まる二人に目がいった。

「・・・や、めっ、・・・はなし、」

か細い悲鳴のような声が聞こえる。陸の手を握り締める転校生に頭に血がのぼり、しかしその手を振り払おうと身じろぎする陸を見てすぐに冷静になった。

オレの存在に気付いてざわめきだす生徒達をよそに、陸のもとへ真っ直ぐに向かう。気付けば近くに稜が居て、結局この二人は食堂に居た全員に、そのブラコンっぷりを見せ付けたのかと少しだけ笑いそうになった。

「・・・陸、落ち着け」
「・・・、っゆず、・・・」

オレに気づいてなかったらしい陸が、舌足らずに名前を呼ぶ。震える背中を腕の中に抱きこんで、幼子に言い聞かせるようにだいじょうぶと小さく囁く。他には聞こえないように、耳に直接言葉を吹き込む。

「だいじょうぶだよ、陸」
「りょ、う・・・っ」

転校生の腕を陸の手から外した稜は、何事もなかったように微笑む。陸の顔を覗き込んで、安心させるように笑う。ぎゅう、と転校生が握っていた方の手を繋ぐ二人。流石ブラコン、なんて内心で笑ってたら片方の手がオレの服を握り締めた。先日食堂に来たときもこんな感じだったな、なんて。


「・・・ゆず、る・・・、りょう、」

正直風紀委員の仕事なんて頭から抜け落ちていた。あー、でも委員長が三人も居たから平気・・・だと信じたい。まじですいません先輩方。殊勝に謝ってみせるも、すべて内心で言ってるだけなので意味がない。でも今はそんなことより陸を優先したかった。


震える陸を抱き上げて、食堂から退散する。とりあえずオレの部屋でいいよな。・・・頭の包帯と、額の怪我と、一部短くなった前髪については後でゆっくりじっくり聞くことにする。だから、。


「陸、」

・・・―この震えが少しでも早くおさまりますように、と。


(陸に拒絶されないこの身を、どれだけ幸せに思ったことか)





2010/03/27/


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