38
(主人公視点)



稜の頬に唇を落とした刹那、腕の中から稜が消えた。・・・訂正、転校生に奪われた。
俺の腕の中から稜の肩を引っ張ったらしい転校生に、両肩を掴まれ詰め寄られる稜。

「稜・・・っ?なんでおれのこと無視するんだよ!?」

腕の中から消えた温度に、むっとする。稜の肩を掴んでる転校生の手を睨んで、腕を伸ばした。

ぱしっ

「やめて、・・・稜に、さわる、の」

乾いた音を立てて手を払う。稜が嫌がってる素振りをみせたわけではない。やりすぎだとはわかってるけど、・・・大事な弟を触られてるのは俺が嫌だったから。
俺が叩いた方の手を、もう一方の手で庇うように覆う転校生。髪の毛で目元が伺えないため、こちらを見てるのかそれとも睨んでるのかはわからないけど。とにかくじい、と俺を凝視する転校生をよそに、稜に手を差し出す。
苦笑を浮かべた稜は手を俺のに重ねる。・・・と意外なところから怒声がとんできた。

「ってめえ!いい加減にしやがれっ!」

いや、意外じゃなかったかも。何時の間に移動したのか、転校生の前に出て怒鳴る雨宮仁。そしてその後ろ、つまり転校生の隣で転校生の手を優しく撫でつつこちらを睨む会計。

「なんとかいいやがれっ、ああ!?」
「いい加減するのはお前だ。これ以上騒がしくするな」

凄む雨宮に、どうしようかな、と考えて稜を抱きしめていると、何故か後ろから尊先輩の声がした。・・・忘れてた、そういえば三人の委員長も居たんだったっけ。というかさっきから稜に向けられてるであろう生徒達からの罵声が耳に痛い。声の大きさが半端なくて、本当に声が耳に突き刺さるようだ。

「陸、お前もだよ。・・・一般生徒と親しい仲になるのはかまわないけど、周りに及ぼすお前の影響力と場を考えなよね」

不機嫌そうに言う峻先輩。言われてることは本当なので、内心落ち込む。実際いま稜へ向けられてる罵声が、稜を傷つけてないとは言い切れないから。

「・・・大丈夫だよ、陸」

あくまでも内心だけで落ち込んでたつもりだったので、稜がそう言って背中に手を回してきたのにとても吃驚した。

「で、おまえらはどういう関係なんだ?」

笑って首を傾げる体育委員長。稜をさらに強く抱きしめ返して、首だけを体育委員長の方に向ける。

「・・・弟、です」
「陸がいつもお世話になってます。一年の桂木稜・・・陸の弟です」

罵声を飛ばしつつ聞き耳を立てていた生徒達も、委員長三人も、雨宮も、みんな静まり返ってしまった。ちなみに転校生と会計はさっきまで通り。まあそれもそうか、俺と稜が兄弟だって生徒会室で知ってるから。

にしても、俺と陸が兄弟ってそんなに意外だろうか? 悲鳴を上げる生徒達や唖然とした顔をみせる委員長たち、雨宮にそんなことを考えた。





2010/03/20/


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