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(稜視点)



にこにこにこーっと僕に全開の笑顔を向ける春風 灯くん。その隣で申し訳なさそうにこちらを見る橘 海斗くん。海斗は僕のクラスメイトで、灯は海斗の同室者で。二人は今現在寮の部屋に僕を居候させてくれてる人たちだ。

今僕らは食堂に居る。無駄に目がいい道哉に見つからないよう、端の方でこそこそ夕飯を摂る僕ら。

「脇役平凡受けっ!! ああ王道主人公をこの目で見れるだけで幸せなのに、脇役受けまで見れるなんて・・・! でも稜くん良く見ると綺麗な顔してるから、平凡じゃないか・・・」

部屋に居候させてくれると申し出てくれた、クラスでも特に仲の良い海斗に、同室者として紹介された灯の第一声はそれだった。飛びぬけて、って訳じゃないけど可愛らしい容姿をしている灯が、黒い目をきらきらさせて叫ぶ。ええっと、なんか彼は腐男子というものらしくて、男の子同士の恋愛に興味があるんだって。小説とか、漫画とか。一度見せてもらった彼の本棚はすごかった。明らかに18歳未満はだめ! な本ばっかりで驚いたのは記憶に新しい。

「今日も秋月道哉くんは役員専用席で食べてるんだね! しかも今回の夕食は会計さまが独り占め!? 一歩リード!? 萌えええ!!」
「何時もの事ながら、なんかごめんな稜・・・。」
「いや、慣れたから大丈夫だよ。海斗もおつかれ」

申し訳なさそうな顔をするイケメンの彼、海斗は、バスケ部期待のルーキーと言われてて、親衛隊も小規模ながら出来てるらしい。無駄にテンションの高い灯を見て、胃を抑えて苦笑いする海斗くん。

なんだかんだでにぎやかに楽しく食事を摂ってたら、食堂の入り口がざわめいた。他の役員の人たちでも来たのかな? あ、陸に会いたいなあ・・・。陸にも親衛隊があるらしく、もしもの事を考えて陸と僕は公の場で話さないことを決めた。本当はちょっと嫌だったけど、陸の心配そうな顔を見たら反論できなくて。結局この間生徒会室で会ってから、一回も話せてないのが現状だ。前髪切るって約束したし、でも陸携帯持ってないから連絡取れないし。ご飯を食べつつぼんやり考えてたら、突然灯が発狂した。

「ちょ!! あれ桂木陸さまだよ!! なんで食堂に? 先日も来たって聞いたけど、食堂で生桂木さまを見れるなんてっ!! あっもしかして王道主人公に接近しちゃうの!? 無口わんこな書記攻めっ、萌えるー!!!」

えぇと、・・・なに?

「ごめん灯、日本語喋って」

興奮しだした灯を、どうどうとなだめる海斗。流石同室者、なんか手馴れてる。でも海斗もちょっと興奮してるのか、頬を赤くして灯と同じ方を見つめてる。・・・って陸!?

ぱっとざわめきの中心に目を走らせれば、人垣でよく見えないけどそこには確かに陸がいた。人嫌いとまではいかないけど、人ごみが苦手な陸が食堂を利用するなんて・・・ちょっと意外かも。両脇にかっこいい、恐らく先輩を連れて歩く陸。ああ、やっぱり前髪切らなきゃ邪魔そうだな。なんて考えて。頭に巻かれた包帯をみて胸が苦しくなる。どうしたんだろう・・・


ほんのちょっと、陸を見て頬を染める生徒達に嫉妬したりしてみて。ああ僕も、陸の名前を叫びたいな、・・・なんて。





2010/03/15/


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