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(会計視点)



「なあ、陸ってどんなヤツなんだ?」

髪の毛に覆われた顔を傾けて尋ねる道哉。小動物のようなしぐさにキュンとしつつ、質問の内容にすこし眉を顰めた。

「陸ちゃんのこと気になるの? 道哉ちゃん」

どんなに陸ちゃんに無視されてもめげない道哉ちゃん。
なんで道哉ちゃんはそんなに彼のことを気にするんだろう。

もし道哉ちゃんが、陸ちゃんのこと好き! なんて言っちゃったら、おれちょおっと勝ち目なさげだしねえ。周りからみて自分がどれだけ不誠実かなんてよくわかってるし。その点陸ちゃんは誠実そうだもんね。顔も綺麗だし、頭良いし、まあ人とコミュニケーションをとろうとしないとこが欠点かな。桂木稜くん見てたら別に対人恐怖症とかいうわけでもないみたいだけどお?

「うー、気になるって言うか・・・今日仁が陸に怪我させてさ」
「はっ!?」

仁、ってよく道哉ちゃんにくっついてる不良の雨宮仁? 今現在「役員席で食べる気はねえよ」とか行って階下からおれのこと睨んでる彼のことだよね? っていうか陸ちゃんに怪我!? なにがあったの!

「仁と陸って、あんまり仲良くないんだろ? おれが陸と喋ってたらさ、急に仁が陸のこと壁に叩きつけて・・・」
「叩きつけたのっ!? え、それで陸ちゃんは? どうしたの?」

っていうか雨宮と陸ちゃんって仲悪かったの? 初耳なんだけど! 学年違う上にあんまり人がいるところに寄り付かない陸ちゃんと仲悪いって・・・。うーん、道哉ちゃん関係かなあ、これは。

「大丈夫だから気にするな、って。保健室に連れて行こうと思ったんだけどさ、仁がおれのこと引っ張るから・・・」
「まさかの放置!?」
「え、放置じゃないだろ、・・・陸も大丈夫って言ってたし・・・?」

いやいやいや、流石のおれもそれは不味いと思うな! 頭上に疑問符を浮かべて首を捻る道哉ちゃんは可愛い。見た目は確かにオタクだけど、仕草がなんか胸にくるんだよねえ。小動物的ななにかを感じる。だけど! 壁に叩きつけて放置ってどうなのっ!? いや、手を出したのは雨宮だから道哉ちゃんに言っても仕方ないけどさ・・・!
陸ちゃんのこと嫌いじゃないし、むしろ結構好感持ってるからすっごい焦る。

でも折角他の役員出し抜いて道哉ちゃんと二人っきりで食堂にいるのに、話題が陸ちゃんっていうのはちょっとイラってするかもお? とかなんとか思ってたら入り口付近からざわめきが聞こえてきた。
げっ、会長達来ちゃったかな? まずーい、怒鳴られちゃうじゃん。


「木野さまー! クールな貴方がだいすきですっ!!」
「峰せんぱーい! 今日もかっこいいぜぇえ!」
「ね、ねえちょっと! あれって桂木さまじゃないっ!?」

えっ陸ちゃん!? しかも体育委員長と文化委員長と一緒? なにそのメンツ・・・? 入り口から専用席へ続く階段までの道がぽっかりとあき、人垣の中から悠々と歩く三人連れ。背の高いがっしりした体育委員長は、部活の後輩とかまあ体育会系なやつらに兄貴ー! って叫ばれてて、細身だけどがちっとした筋肉質な体型の文化委員長はキャアキャア叫ぶチワワちゃんたちに絶対零度の視線を返してる。
そして二人の真ん中で、前髪でよくみえないけどそれでも美人な陸ちゃんが堂々と歩いてきてて。

「・・・あれって・・・」
「陸・・・! 怪我酷かったのか・・・!?」

ぐるぐると包帯を巻かれた頭。それを見た道哉ちゃんがちょっとショックを受けているのが横目に入る。陸ちゃんの存在だけで驚いてた生徒達が、怪我をみてさらにざわめく。そして怒りに染まる彼ら。誰かが陸ちゃんに怪我をさせたのか、それとも陸ちゃん自身がヘマして怪我したのかは不明だっていうのに、生徒達の頭はもう陸ちゃんに怪我を負わせた加害者への怒りで一色のようだった。まあ加害者がいるのは確かだけど。ちょっと不味いんじゃなあい、これ。

今この空気の中で道哉ちゃんが陸ちゃんに謝りに行ったりとかしちゃったら・・・、うんやばい! ただでさえおれとか会長たちの親衛隊に目ぇつけられてるのに、陸ちゃんの親衛隊にまで目つけられたらやばいんだよねえ!

「道哉ちゃ・・・!」

時に既に遅し? 道哉ちゃんいないんだけど!!





2010/03/14/


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