28
(主人公視点)



じい、と委員長二人に見つめられて早五分。
両委員長の鋭すぎる目に晒されて俺の体力は消耗しまくりである。そんなに見つめないでください、穴が開く。

「え、っと・・・」

無言で先を促す仕草すら怖い。見下ろされているというのもまた一段と圧迫感を与える原因だと思う。それに五分きっかり黙りっきりの二人が怖すぎる。鋭い目じゃなくてさっきまでの丸い目の方が似合ってますよ体育委員長、いつも飴をくれるときみたいに表情緩めてくれませんか尊先輩。・・・要約すると二人とも怖い、である。

「・・・、壁に、ぶつかって・・・」
「どうして?」
「すべって・・・」
「なにに?」
「・・・え・・・と、・・・書類、とか」
「とか?」
「・・・その・・・」

根掘り葉掘りホンキで尋問である。というか何故俺はあの二人を庇うようなことを・・・、別に言ってもいいのでは・・・。・・・・・・、いや、だめだ。

二人に知られたら恐らく、風紀委員長である譲にも伝わるだろう。そうすれば譲は風紀委員長として二人に罰を下す。罰則の内容は色々だが、その際に罰則をくらった本人がきちんと与えられた罰をこなしているか、見守るのは同室者の役目なのだ。
イコール、稜に迷惑がかかってしまう。・・・ブラコンと呼ばないでくれ、わかってるから。

折角転入生から離れられているのに、俺のせいでまた稜が苦しむ羽目になるのはダメだ。・・・これは建前で、転入生や生徒会役員が稜に近づくなんて堪えられない。俺のエゴだ。

「・・・俺が勝手に、・・・壁に背中から、ぶつかっただけ、・・・です、」

頭上から溜息ふたつ。・・・思わず肩が震えたのには目を瞑って欲しい。

「陸、」

尊先輩がこちらに手を伸ばしてくる。反射的に目を瞑った俺の頭に、ふわりと掌が乗せられた。

「・・・?」
「そこまで隠したいなら聞かない、」
「まあ大体察しはつくけどな!」
「峰は黙ってろ。・・・、とにかく、陸がそれを喋りたくないならそれでいい。」
「・・・尊先輩、・・・」
「ただし」
「 ? 」
「夕飯をオレと食べることが条件だ。」
「、・・・それ、だけ?」
「やっぱり何か隠してるのか」
「っ」

鎌かけられた・・・! 溜息を吐いた尊先輩は、俺の頭に乗せたままだった手でぐしゃりと髪の毛を掻き乱す。些か乱暴な手つきに頭皮が痛む。いたた、髪の毛抜ける・・・!

「、や、め、・・・せんぱいっ、・・・」
「もう一つ条件をつけよう、」
「・・・っ、?」
「食堂で、オレと峰と三人で夕飯を食べる。それが条件だ」
「ん? 俺もいいのか?」
「・・・まあな」
「ふうん。ま、なら陸の背中に湿布張ってから行くか!」

ちょ、え、まじで? 俺この間食堂行かないって誓ったんですけど・・・! ゴールデンレトリーバーに戻った体育委員長の笑顔が眩しい。そして憎らしい。

「頭のたんこぶもなー、冷やさなきゃだめだよな」
「アイスノンを包帯で固定すればいい。」
「お、それいいな! そうしよう!」


天下の生徒会も、流石に三年委員長コンビには勝てなかったです・・・。





2010/03/12/


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