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(体育委員長視点)



苦手な地理の授業。次回は自習ね、教科担当の教師にそう言われてつい飛び跳ねて喜んだら、にっこり笑顔で授業で使った荷物を準備室に戻しておくよう言い付かってしまった。他のクラスよりも一足早く終わった授業に、クラスメイトたちはめいめい散らばっていく。折角ちょっとだけ長い休み時間をゲットしたというのに、俺の目の前には地球儀やらなんやらが積み重なっていて。肩を落として溜息を吐くが、まあ自業自得か。よし、と意気込んで荷物を両手に抱えて廊下を歩く。
まだ他のクラスは授業中なので、いつもは人で溢れ帰る廊下も人っ子一人いなくて・・・・・・、いな、くて?

「おいっ、どうしたっ!?」

誰もいない廊下の壁際で倒れる一人の生徒。慌てて荷物を放りだしてその生徒の元へ駆け寄る。地球儀が廊下に落ちて盛大な音をたてた。

「大丈夫か!? 意識はあるか? あるなら返事を、し、・・・ろ・・・」

床に片頬をくっつけて転がる人物は、なんと一つ下の生徒会書記だった。こんなトコロに倒れていたのが意外過ぎる人物でつい言葉が止まる。よく見たらあたりに書類が散らばっていて、どこかにそれを持って行く最中だったのだろうその人。

艶とした黒髪が廊下の床に垂れていて、なんだかもったいない気分になる。だからその思いに従って、書記の上半身を抱き起こした。

「、・・・ん」
「おい、大丈夫か?」
「・・・だ、れ」
「体育委員長の峰高貴だ。それよりなにがあった?」
「・・・あたま、いた・・・い」

苦しそうに細く目を開くと、片手をゆっくり頭へ当てる。後頭部をすこし触って、すぐに力なく床に落とされた腕をみて、俺も頭に手を伸ばしてみた。

「たんこぶ・・・? 頭をぶつけたのか?」

そこそこ大きなたんこぶができていた。後ろからなにかにぶつからないとできないそれに、少し眉を顰める。普通に生活してたら、めったにたんこぶなんかできなさそうな場所だからだ。

ざわ、

「お、・・・」

先ほど地球儀を落とした時の音が原因でか、生徒が集まってきていることに今更ながら気付く。ざわざわと空気が揺れる中、倒れている生徒が書記であることに気付いてさらにざわめきが大きくなった。

「峰、なにをして、・・・っ、陸!?」
「おお、木野か! なんだ、こいつと知り合いか?」
「あ、ああ、この前新歓の話し合いで少しな、・・・それよりどうしたんだ? なにかあったのか?」

新歓の話し合い? それは会計の仕事じゃなかっただろうか、・・・。少し疑問に思ったが、まあ今は珍しく焦った顔を見せる男の方に興味がある。
野次馬の中から颯爽と現れたのは、文化委員長の木野尊だった。

「それがわからんのだ。準備室へ荷物を運んでたら、廊下にこいつが倒れてた。そしてこいつは何故か後頭部を強打している。・・・それしかわからんな。」
「強打? 、陸、大丈夫か?」
「・・・う、・・・。ン? ・・・みこと、せんぱ・・・い?」
「そうだ。陸、なにがあった?」
「・・・ちょっと、あたまぶつけた、だけ、・・・っ!!」
「どうした陸!? なにをしたんだ峰!」

少し不安定だったから身体を持ち直しただけだ! 背中に回している腕の位置を少しかえた瞬間、書記の顔が苦痛に歪む。そんなに怒鳴るな木野。

「い、た・・・っ!」
「・・・背中にも怪我をしているようだな、・・・」

背中と後頭部に怪我、か。

さっと木野と目配せをする。

「次の授業が始まるから、君達ははやく教室に。ああ、君。悪いけどそこの荷物を準備室に運んどいてくれ」

立ち上がった木野は、よく通る声で野次馬に指示を出す。文化委員長からの指示に全員が書記を心配気に見つめつつ去っていった。ちゃっかり荷物を片してくれた木野に感謝。

俺は俺で、そのまま書記を抱き上げた。お姫様抱っこじゃ背中に負担がかかるので、頭を俺の肩にもたれかかせて、肩と尻のあたりに腕を回す。抱きかかえるような体勢になったのを見て、木野がすごい形相でこっちを見てるんだが・・・。こいつ生徒会のこと嫌いじゃなかったか?

そのまま二人で保健室へ向かう。
とりあえず知りたいのは、書記の体重。


こいつ軽すぎるだろ。





2010/03/11/


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