24
(主人公視点)



背中を強打して一瞬息が詰った。
咳き込みそうになるのを抑えて、目の前でよくわからない会話を繰り広げる二人を眺める。後頭部もぶつけたから、すごく頭がクラクラしていた。
俺の肩を掴んで拘束する不良・・・ああ思い出した、たしか一年の雨宮仁の腕に、転入生が飛びつく。っていうか年下? 最近の子は発育が良いな。自分より身長も、恐らく筋力も強い雨宮仁に掴まれている肩はビクともしない。

「やめろよ仁っ! 急にどうしたんだよ、陸を離せって!」
「ちょっと下がってろ道哉。・・・おい、テメェ気にくわねえんだよ! その態度はなんだ!? 道哉が話しかけてんだぞっ!?」

転入生の名前は道哉というらしい。どうでもいいか。ギラギラと睨みつける雨宮の目をみて、溜息を飲み込んだ。・・・まあ無視したことは認める。でも無視されてもめげない転入生もどうかと思うけどな。

「じ、仁! おれは平気だから、っ! 陸が苦しがってる、離してやって・・・!」

いや、まあ平気なのはわかってるだろ。平気じゃなかったらこんなに無視しても話しかけ続けるわけがない。

「でもよぉ、道哉!」
「っだいじょうぶ! 大丈夫だから! おれは平気だ、陸はあんまり喋らない奴だって知ってるから!」

あれ、なんか突っ込みいれる気も失せてきた。いい加減背中と頭が痛すぎてちょっと言葉を出すのも億劫になってくる。頭がんがんする。

「・・・っ、」
「仁!」
「っち、・・・」

盛大な舌打ちと共に話された腕。己の身体を圧迫していた腕が消えてちいさく咳き込む。背中いたい。そうしていると、何故か転入生が目の前に歩み寄ってきた。自分より低い位置にある顔が、もさもさの髪の毛で良く見えないけど恐らく上目遣いにこちらを見つめてくる。え、なに? 思わず首を傾げる俺。

「その、仁がごめんな・・・。背中とか痛かったよな? ・・・えっと、・・・ほ、保健室行こうぜ! ついていくから!」

いやいやいやいや、転入生が謝る意味がわからない。恐らくこの状況に置いて謝罪するポジションにある張本人は後ろで俺をすっごい睨みつけてるし。さっきの転入生の仕草にやられてか、頬を染めた顔で睨まれてもあんまり怖くない。

「・・・・・・、いい、・・・」
「え?」
「・・・だいじょうぶ、だから。・・・」

君に、心配されたくはない。出来れば今後一切後ろの雨宮仁ともども近づいて欲しくない、もちろん稜の傍にも。
声を発する度に背中が軋んであんまり多く喋れなかったけど、転入生を半ば睨みつけるように見つめる。しかし何故だか転入生は顔を赤くして、ちょっと俯いてしまった。え、いやいや、今俺君のこと睨んだんだよ? どこに照れる要素が・・・? なにこの子エムなの?

結局背中の痛みと、頭痛がいつのまにか酷い眩暈に変わった所為で転入生および雨宮仁が去っても背中を壁に預けたままだ。
雨宮に引きずられながら、なにかを叫んでた気がする。でもいろいろめんどくさくて俺の耳は見事にその声をスルーしていた。だって興味ない。





2010/03/10/


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