23
(王道主視点)



がんッ、

大きい音を立てて陸の身体が壁にぶつかる。かすかな呻き声、陸を壁に叩き付けた仁に、おれはすごくびっくりした。なんで、・・・なにやってるんだよ、仁・・・! 確かに仁は不良だし、手も直ぐに出る奴だけど、こんないきなり人を傷付けるような奴じゃない! おれの知らないところで二人の間でなにかあったんだろうか、それだったら凄くいやだ。おれの知らないところで勝手に色々起こってるなんて、・・・おれを無視するような、そんな・・・。
不良である仁と、生徒会である陸が仲良しとは思えなくて。それならやっぱり二人の間には何かあったんだ! それなのに、おれちっとも気付かないでへらへら笑ってた・・・、ちくしょう! 痛みから顔を歪める陸をみて慌てて仁の腕に飛びつく。

「やめろよ仁っ! 急にどうしたんだよ、陸を離せって!」
「ちょっと下がってろ道哉。・・・おい、テメェ気にくわねえんだよ! その態度はなんだ!? 道哉が話しかけてんだぞっ!?」

え・・・? も、もしかして仁は、陸がおれにあんまり返事しなかったから怒ってるのか? ついてくるな、っておれが言われたことに対して、怒って、くれてるの・・・?

「じ、仁! おれは平気だから、っ! 陸が苦しがってる、離してやって・・・!」
「でもよぉ、道哉!」
「っだいじょうぶ! 大丈夫だから! おれは平気だ、陸はあんまり喋らない奴だって知ってるから!」
「・・・っ、」
「仁!」
「っち、・・・」

荒々しく手を離す仁にほっとする。おれのために誰かが傷つくのは嫌だった。
それに、陸があんまり返事を返してくれないことを、本当におれは気にしてないし。だって陸はだれ相手にでも無口だろ? なんか溺愛してるっぽい稜に対しても、あんまり言葉数は多くなかったし。陸はそういう奴なんだって知ってるから。・・・そりゃいつかはたくさん、おれに話しかけてくれるようになると嬉しいけどさ。まあそれは目標! だっておれ、陸と仲良くなりたい。

・・・仁がおれのためにやってくれた、ってわかったけど、陸はよく思わないよな。いきなり壁に叩きつけられて痛い思いしたんだから。

咳をもらす陸に、申し訳ない気持ちになる。壁に背中を預けたままの陸の前に言って、ちょっとだけおれより高い位置にある顔を見上げる。これするといつも皆顔を赤くさせるけど、陸はきょとんとした表情を浮かべてちょっと首を傾げるだけだった。

「その、仁がごめんな・・・。背中とか痛かったよな? ・・・えっと、・・・ほ、保健室行こうぜ! ついていくから!」
「・・・・・・、いい、・・・」
「え?」
「・・・だいじょうぶ、だから。・・・」

サラサラの黒髪の間から覗く青い瞳に見つめられて、顔が熱くなっていくのがわかった。やっぱり陸ってかっこいい・・・というより綺麗って言うのかな。あー! もう!! 絶対おれ、顔真っ赤だ・・・! 陸の目を直視できなくて、顔を俯かせる。これだからイケメンは! 羨ましいぜまったく・・・!
それにしても、もしかしておれのこと気遣ってくれたのかな・・・? だってどう見ても大丈夫そうじゃないし、おれに心配かけないように?
手で仰いで顔の暑さを和らげようと頑張るけど、中々熱は引いてくれない。陸の気遣いに気付いてしまったからこそ、気恥ずかしさが勝って顔は熱いままだ。

「チッ・・・行くぞ道哉」
「え、? ちょ、じ、仁っ? ひきずるなよ、なんだっ!? ちょ、あ、陸! ほんとにごめんな! 今度一緒にメシくおーな!!」

そんなおれらの様子を見ていた仁が、舌打ちと共におれの腕を掴んで引きずり出す。力じゃ仁に勝てなくて引きずられるままになってしまい、どんどん陸が遠ざかっていくことに焦った。

でも、返事こそくれなかったけど。・・・陸が、壁に身体を預けておれを見送ってくれたことに、胸の奥があったかくなった。





2010/03/10/


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