22
(主人公視点)



誰でもいいから助けてくれないかな。


昨日あのまま生徒会室に泊まってしまった俺は、仮眠室ではなく仕事が終わったあとそのまま机の上で寝てしまったわけである。ぎしぎし痛む身体に顔を歪めて、昨日浴びていなかったのでシャワーを浴びに席を立った。向かう途中に目に入る書類の山から意識して目をそらし、空腹を訴えるお腹をおさえてシャワーを浴びた。

浴びるだけのシャワー。水を含んで重たくなった髪の毛をタオルでわしゃわしゃと乾かしつつ、シャワー室から出てキッチンへ行き、冷蔵庫からアイスを取り出す。ソーダ味のそれに強張っていた頬が緩んで。甘いものってやっぱり美味しい、お手軽に幸せな気分になれるからいいよな。
アイスをペロリと平らげ、制服に着替えて髪を手櫛で整える。そうえいば稜が前髪切ってくれるって言ってたな、いつ切ってもらおう。顧問に渡す分の書類を手にとって、生徒会室を出た。お腹もそこそこ満たされ、すこし浮上した気分に足取り軽く廊下を進む。学園と寮は渡り廊下で繋がっているので、外に出ることなくすぐ職員室に着く。
寝すぎた所為か、とっくに一限目がはじまっている時間帯なので廊下は酷く静かである。時折各教室から漏れる生徒達の声、教師の声に耳を傾けて、穏やかな気分に浸る。誰もいない空間、静かな時間はダイスキだ。・・・それなのに、俺には疫病神でも憑いているんだろうか? 廊下の曲がり角を曲がって直ぐに、転入生と金色と茶色の中間くらいに染められた髪の、柄の悪い生徒が居た。え、なにかつあげ? そう疑問を抱くほどの違和感。余りにも違いすぎる外見の二人に首を傾げる。生徒会として止めたほうがいいのか? でも昨日の今日であまり転入生と関わりたくないし・・・。こんな悩んでないでさっさと踵を返せばよかった、そう後悔しても時すでに遅し、というやつで。

「、あ!」

何故だか急にこちらを振り返った転入生。やばい見つかった。助けまいか迷っていた思考なんてふっとび、逃げ出したいと足が後ろに動く。

「陸! こんなとこでなにしてんだ?」

こっちの台詞である。今は授業中、生徒会など特権を認められているわけでもない転入生が何故廊下につったってる? ん? 一緒に居た不良? すんごいこっち睨んでるのみて、この不良くんも転入生に恋をする一人だとわかったから放置。いたた、視線がいたい。

「、・・・きみも、・・・いま授業中・・・」
「おれ? おれはさぼ、・・・っと、えーと、その、あれだよ・・・た、体調悪くて!」

誤魔化しきれてないんだけど。まあ・・・関わる気もないからつっこまないけど。

「そう、・・・なら保健室に、行けば・・・。じゃあ、」
「俺の心配してくれるのか!? ありがとな陸!」
「・・・べつに」
「照れるなよ! 陸が心配してくれるなんてホント嬉しいっ! あ、でも安心しろよ! おれ元気だからさ!」

授業もどれ。というか知ってる、明らかに元気だろお前。ああもう苛々してきた。不良くんはずっと俺のこと睨みつけてきているし。やけにポジティブな転入生にもいらっとする。

これ以上会話したくなくて、踵を返す。職員室へは遠回りになるけど、他の道で行こう。

「陸! どこ行くんだ?」
「・・・・・・」
「待てって! そうだ、おれもついてく!」
「・・・・・・」
「なーあー、陸? どうしたんだよ?」
「・・・・・・、俺、仕事ある・・・から。・・・ついてくるな」

無視されてる、って気付かないんだろうか。それとも気付いてて話しかけているのか、それだったらなんて強靭な神経を持ち合わせているのだろう。それでも俺の、突き放した言葉には驚いたのか、口をポカンとあけて呆ける転入生。その姿に満足して、再び歩みを進める。いや、進めようとした、と言うべきか?

がんッ

「・・・い、」

沈黙を守っていた不良くんが、俺の肩口の布を掴んで壁に抑えるつける。頭と背中をしたたかにぶつけて、鋭い痛みが走った。

ギラギラした目でこちらを睨みつける不良くんは完璧にキレていて、恐らく転入生を蔑ろにした事に怒っているのだろう。本当にめんどくさいな!

ああもうほんと、
誰でもいいから助けてくれないかな。





2010/03/10/


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