17
(風紀委員長視点)



あまりにも非常識な発言が目立つ生徒の言葉に、呆気にとられてしまった。いやいや、なにこいつ、なにこれ? もじゃもじゃとした黒髪の小柄な生徒、ここ役員専用席だよな・・・? 誰だよこいつ。もしかして・・・これが例の転入生? 陸以外の生徒会役員をたぶらかしたとかいう? ・・・これのどこに魅力が・・・?
見た目も中身も最悪にしか見えねぇんだが。

上半身を無理やり、不審な生徒の方を向かされている陸の横顔を唖然と見つめて、しかしその唇がかすかに(い、たい・・・)動いたのが目に入って席を立った。
とりあえず生徒会の奴らの趣味は謎のままである。興味ないからどうでもいいが。

「おい、放せ。陸が痛がってるのがわかンねえのか?」
「あっ、ご、ごめん陸・・・! でも、無視する陸も悪いんだからなっ!」
「・・・・・・」

あー、・・・睨むな陸。食堂に連れてきて悪かった、マジで謝る。いや、こんな非常識の塊みたいなヤツがいるとは思わなくてよ。
内心でつらつらと謝りつつ、陸が立ち上がって俺の腕を掴んだのにびっくりする。おーおー、こんな自主的に動いてる陸を見れるとはな。いつも稜に関わることか、誰かが引っ張ったりしないと必要以上に動かないこいつがなあ。
なんて関心している場合でもなく。

「・・・帰るっ・・・」
「ンな怒るなよ陸。途中のコンビニで弁当奢ってやるから」
「・・・。・・・プリン、も」
「アイスも買ってやる」
「・・・・・・怒ってない」

地味に唇を突き出す陸の頭をぐりぐり撫でて、さっさと食堂から去るべく足を進める。ちなみにオレの腕を掴んでいた陸の手はとうに離されている。なんかもったいない事したな。完全に後ろで何事かを喚く転入生を無視するオレら。あ?うぜえなあいつ。つぶすぞ。

「・・・っ無視するな、ってば!!」

ぐい、

キャー!! こちらの様子をじっと見ていた、生徒たちの方から悲鳴が上がる。突然後ろに引っ張られた陸は見事にバランスを崩した。オレたちはちょうど二階に設けられている専用席から、階段を降りて帰る途中だったわけで。さくさくと階段を下りていた陸の肩を、再び掴んだ転入生。

「、っ・・・!」

やべえ。グラリと大きく傾いだ陸の身体。何時ものこいつなら、大したことのない衝撃だった。しかし陸は今ろくにメシも食っておらず、その上慣れない仕事を連日やり続けて疲れ果てているのだ。
オレの目の前で、陸が階段から足を踏み外して落ちていきそうになる。

自分がした事で起こった出来事に、転入生が呆然と立ち尽くしている姿が横目に入った。舌打ちをしてから、慌てて滑り落ちる陸の腕を掴んで引っ張りあげる。
・・・あげたはいいが、勢いよく引っ張りすぎた上に予想外の陸の軽さに、陸を胸に抱きこんだままその場で一回転してしまった。しかも情けないことに、足場の悪い階段で一回転してしまった所為で、その場で腰からこけた。・・・かっこ悪すぎるだろオレ・・・。再度あがった悲鳴と腰の痛みに顔を顰めつつ、腕の中の陸を見る。

「だいじょうぶか?」
「・・・っ、・・・」
「・・・陸?」
「・・・、っごめ、ゆず・・・。たすか、った・・・」
ぎゅう、と目を瞑って言う陸。小さく震える指が、オレの服の端を握り締めていた。
そんな陸を抱きしめて、背中を一定のリズムでぽんぽんと叩く。

元々青白かった顔色が、いまや紙のように真っ白になっていて、。


クソ、転入生まじでぶっつぶすぞ。





2010/03/08/


prev next

MAIN-TOP

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -