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(風紀委員長視点)



目の前に腰掛けた男を見て、自分の機嫌が上昇するのがわかった。しかし前髪で隠れた男の顔色が酷く悪いことに気付いて、舌打ちが出そうになる。

「おい、陸」
「・・・? な、に、譲・・・?」

きょとんと首を傾げる男、もとい陸にくらりとした。まじで可愛いなお前。でも、隈こそ出来ていないが、それでもひどく青白い顔色にはイラつく。

「副会長はどうした? 今日は更科との話し合いのつもりだったんだがよお?」
「・・・副会長は、用事で。・・・今日は、俺が代理・・・」

積極的に生徒会に関わらない陸が代理をしているということは、どうやら生徒会のやつらが転入生の所に入り浸っているという噂は本当らしい。ということは、最近陸が生徒会の仕事をしているとかいうアレも本当か・・・。

「譲、・・・」
「ん? なんだ?」
「書類、見終わった・・・。チェック入れた、から」

そう言って渡される書類。校内の地図が書かれたそれには、新歓の日に風紀委員が見張りに立つ場所のチェックが入れてあった。その図の上から赤いペンで新しく入れられている印。

・・・ふうん、確かにこの場所にも人を配備していたほうが良さそうだな。

他にも色々書き込まれており、的確なそれに素直に感嘆する。その書類を無造作に隣に居た風紀委員に渡して、席を立つ。
それから陸のところへ行き、腕を掴んで無理やり立たせた。っていうか腕ほせぇな・・・。少し力を込めただけで折れそうなそれにちょっと不安になりつつ、こちらを怪訝な表情で見つめる陸にニッ、と笑いかける。

ちなみにうちの委員は優秀なのばっかりなので、オレの行動をみてさっさと書類を纏めて解散して行っている。部屋を出る前にちゃんとオレと陸に挨拶して行く程度には躾けてある。さすがオレ。

「・・・なんだ?」
「メシ、食い行くぞ。どうせ碌なモン食ってねえんだろ?」
「食べ、てる」
「んじゃあ今日の昼なに食った?」
「・・・・・。飴、」

スパン、といい音をたてて陸の頭が傾ぐ。

あ、やべ。つい手が出た。叩かれた頭を抑えて恨みがましそうにこちらを睨む陸。ちょっと涙目である。

「飴はメシじゃねえよ。おまえその内倒れるぞ」
「・・・食堂やだ」
「あ? 耳でも塞いどけよ」

むう、と子供っぽく唇を歪める陸。学園では無表情でクール、と専らの噂だが、案外陸は表情に出やすいヤツだったりする。出やすいっていっても一瞬で無表情に戻るし、よく見てないとわからないくらいに薄くしか変化しないけれど。・・・何でそんなこと知ってるのか? そりゃあ俺は陸と幼馴染だからな。稜を溺愛してることも、無表情で無口といわれつつ実際は喋ったりするのがひどく苦手でめんどうなだけなことも知っている。喋りすぎるとすぐに喉が枯れることも、騒がしいのが嫌いなことも、な。

嫌がる陸の腕を掴んで引きずるように食堂へ向かう。これでも一応、陸のことが大事なんでな。倒れられたら困る。・・・まあ倒れたら倒れたで、じっくり看病してやるけど?





2010/03/07/


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