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(第三者視点)



こくりと、静かに喉を鳴らして最後の一口を飲み終わった陸は、お茶を配ってくれた文化委員に礼を述べてからカップを返し、席を立った。
しっかり横目で陸の姿を見ていた全員は、陸が席を立ったことに一斉に反応した。陸を見つつ雑談に興じていた文化委員たちは、きょとんと陸を見つめ首を傾げる。

「俺、生徒会室、・・・帰ります・・・」

そう言うと扉まで歩いていき、くるっと振り返って深々と礼をした陸。
ああそうだった。生徒会なんだよな、今からでも文化委員に入ってくれないかな。じい、と陸を見つめるいろんな視線に、本人はどうやら気付かないようである。

「会議、・・・おつかれさま、でした」

ぽつんと呟いてやや上目で全員を見渡す。きゅん、室内の至る所から胸の高鳴る音が聞こえた。

なにアレ可愛いすごい可愛い

わんこみたい、とは全員の言である。そんな陸の元へ、彼を上から下まで眺めながら尊が近付く。

「? 委員長?」
「桂木陸、だったか。甘いものは好きか?」
「・・・? すき、です・・・」

陸の返答に、機嫌良さそうに頷く尊。そんな尊を、頭の上に疑問符を盛大に浮かべながら首を傾げて見つめる陸。

「これをやろう。」
会議用の菓子で悪いが、

す、と差し出された拳に反射的に両手を差し出す。その上にバラバラと落とされるカラフルな飴玉たち。

「あ、りがとう、ございます。・・・」
俺、飴ダイスキです・・・!

てのひらに溢れる飴玉をみて、陸が勢いよく顔を上げる。陸よりも高い位置にある尊の顔を見て、陸はゆるりと破顔した。顔を上げた際に横にながれた前髪。普段よりもずっとよく見える青い瞳が甘く微笑したのを見て、その場にいた誰もが赤面した。陸の顔を誰よりも近くで見た尊は、涼やかな目元を緩ませてふわりと陸の頭をなでる。

気分はさながらワンコを餌付けする人間。または飼い主の気持ちである。

「・・・木野委員長?」
「尊と呼んでくれ。」
「み、こと・・・せんぱい?」
「・・・っ、ああ」

こてん。首を傾げて、無垢な青い瞳に見つめられて。

ワンコを餌付けするような気持ち? もしかしたら、それよりもずっとずっと甘いものが芽生えたような。

「陸、と呼んでいいか?」
「・・・はい、」

小さく頷く陸に、尊は幸せそうな微笑を浮かべた。


そんな二人の後ろで、滅多に見れない陸と尊二人の微笑に 気絶寸前な文化委員がたくさんいたとか。





2010/03/07/


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