(主人公視点)
「今日集まってもらったのは他でもない、今週末に控える新歓について話し合いたいからだ。」
生徒会室内によく通る声で松野がそう切り出す。
みんなの反応をみるためか、そこでいったん言葉を切った松野は室内を見渡したが、生徒会役員はポカンとした表情、各委員長たちは目を眇めて松野を見つめるばかり。
誰も口を開く気配のない中、松野が再び言葉を繋げる。
「当初の予定よりも遅れたが、各委員長方には協力を願い、」
「ちょっと待った」
止められることを見越していたのだろうか。
特に動揺した様子も見せず、松野は自身の言葉を遮った人物を見やる。
「協力を願いたい、ねえ…。 松野、ふざけてるの?」
「全くだ…。どの口がそれを言っているのか分かっているのか?」
氷のような視線で美化委員長の峻先輩が首を傾げる。
それに呼応するように険しい色をした目で松野を見やる文化委員長、尊先輩。
「わかっている、つもりだ」
二人の厳しい視線に目を落とし、しかし顔をあげた松野は言い切る。
委員長二人に目をやり、こちらを向いた。
「…?」
松野に無言で見つめられる…が、どうした。
っていうかなに? なにかしたか?
ぱちりと目を瞬かせて首をかしげる。あ、目を逸らした。
「…、とにかく、新歓の打ち合わせをしたい。」
かまわないか?
結局なんだったのだろう。
そう言い切った松野に、委員長二人は不服そうな表情をしながらもひとつ頷く。
「って言っても、段取りはほとんど陸がやってくれちゃってる筈でしょう?」
「確かになあ。一人で頑張ってたもんな、陸」
保健委員長が青い髪をゆらして笑う。
確かにがんばったけど。いろいろありすぎて倒れたけど。
保健委員長とはそれほど話し合いをしてないはずだ。
新歓のメインは風紀委員とかだからな…。あと文化委員か。
なんで「俺だけ」で頑張ってたって知ってるんだ。
疑問が脳裏をよぎったけれど、次に聞こえた声にどきりと心臓が止まりそうになった。
からからとした笑顔を浮かべて、体育委員長が言う。
低めの、けれど明るい声が耳に飛び込んできて、食堂での出来事がよみがえる。
忘れかけてたけど、忘れちゃだめなんだよな。
告白、の…返事…どうしよう。
2011/05/01