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(風紀委員長視点)



ちらりとこちらを見上げて、戸惑ったように口を開く陸。

「譲…、ここまで、で…いい、」

ぴたりとオレの教室の前で足を止めて、そう言う陸の頭に軽く手を乗せる。

「オレが陸の教室まで行きたいだけだ。だめか?」

少しだけ頭を傾けて、陸の目を覗き込むようにして見つめる。同じように見つめ返してくる青い瞳が、困ったように細められた。陸の教室まで送ろうと思ったんだが…やりすぎか?

「…その言い、方…ずる、い」

む、と唇を尖らせて陸が呟く。それに苦笑を返して、頭に載せていた手で髪の毛を軽く梳いた。ふい、と逸らされた頬が薄らと朱色に染まっていて、首を傾げる。

「どうした、陸?」

「…譲と、稜は…俺に、甘すぎる…から、…甘えすぎ、る」

悔しそうに顰められた眉。しかし色づく頬が嬉しさもあらわしていて、微笑ましい気分になった。甘えるのは好きだけど、甘えすぎるのは恥ずかしいのだろう。

「そうか? まあオレも稜も陸が大事だからな」
「…、っ…」

ぱっ、とさらに頬に朱を散らして、陸が己の頬を隠すように片手で頬をこする。もう一方の手でぐいぐいとオレを教室の中へ押しやる陸。それに笑い声を返して、教室へ大人しく入る。陸の教室は隣の隣。人目も十分多いから、襲われるなんてことにはならないだろう。

「大事なのは本当だからな?」

にやりと笑って陸の耳元に口を近づけて囁けば、狼狽したようにオレを押しやっていた手を下ろす陸。ぱくぱくと口を開閉させた後、赤い頬のままきゅっと唇を結ぶ。青い瞳が思案するように揺れて、オレを見上げる。

「もう、教室、…行く…!」

からかいすぎたか?
くるりと踵をかえして陸が小走りに遠ざかっていく。やりすぎたか、苦笑を零して陸の後姿を見送っていると、ふいに陸が振り返った。

「お昼、…いちご、ケーキ…!」

それだけ言い捨てて、振り返ることなく陸は自分の教室へと去っていった。ワンテンポ遅れで笑い声を零す。


昼飯のあとに苺ケーキな。からかいすぎた礼におごるかな、そう考えて、廊下に出していた頭を教室に引っ込める。くつりと喉奥で笑って、スキンシップやら自分からスキだというのは平気なくせに、変なところで照れる幼馴染の顔を思い返した。


―…ニ人のやり取りを生徒達がばっちり目撃していたのはいうまでもない。
(ついでに譲に恋人疑惑が浮かんだことも)





2010/12/28


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