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(第三者視点)



「やっと起きたか、陸」
「…ん、ふあ…おはよ、う…譲」

チチチ、と鳥の囀る声が外から聞こえてくる。眩しい朝日がきらきらと窓から部屋に差し込んでいる中、ふかふかのベッドの上から気だるげにむくりと身体を起こした陸は、欠伸交じりに譲に返事を返す。コーヒーの入ったマグを片手に苦笑を返す譲。うとうとと瞼が閉じかけて再びベッドに逆戻りしようとした陸を慌てて呼び止める。

「稜が迎えに来てるぞ」
「っ!?」

そんなに慌ててもいなかったかもしれない。極自然に、少し意地悪さを含めて、笑うように譲から齎された情報にがばりと起き上がる陸。ぱちぱちと忙しなく目を瞬かせて、ベッドの上から転げるように立ち上がる。くつくつと喉奥で笑って肩をゆらす譲の手から、譲のとは違う紅茶の入ったマグを受け取ってリビングへと足を向ける。

パタパタと軽い足音をたてて、勢いよく扉を開いた先に…。

「おは、よう・・・っ、稜っ!」
「おはよう、り、く!?」

先に居た稜がびっくりしたように目を見張る。挨拶の途中で裏返った声に陸が首を傾げて、あ、と己の格好を見下ろした。

「陸、ズボン忘れてんぞ」

譲が笑いを堪えながらズボンを持ってくる。譲のシャツを借りているため下着はぎりぎり見えていないが、揺れるシャツからすんなりと伸びる両足の白い肌が朝日を反射して眩しい。

わあ! と耳を赤くさせて慌てる稜。つられて首筋を赤く染めた陸が、いそいそとズボンを履いて服装を整える。その間に陸の寝乱れた頭を譲が手櫛で整え、くつくつと笑いをこぼし続けていた。羞恥から赤くなった目元で譲を睨みつける。大切な弟に間の抜けた姿を見られたのだ、恥ずかしくて仕方ないらしい。


週末に新入生歓迎会を控えた、ある月曜日の出来事。
ちなみに陸が譲の部屋で寝泊りを始めた一日目の朝の風景であった。





2010/11/26


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