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(第三者視点)



「はじめまして稜の隣のクラスでいま稜が滞在してる寮部屋の住人の春風灯ですっ! こっちは同じ寮部屋の橘海斗くん。名前だけでもおぼえていて貰えれば本望っ!! というか桂木さまはなんで瞳が青いんですか? ハーフなんですか? だから舌たらずなんですかっ!? 桂木さま、わあ!!」

ずずい、と稜を抱き締めたままの陸に近付いて喋る灯。興奮の余り、疑問符を使っているのに陸に返答する暇を与えない早口に、おざなりに説明された海斗が灯の後頭部を軽く叩いた。不意打ちに驚いた灯が小さく悲鳴を上げて、頭をおさえて海斗を見上げる。

「なにするの海斗っ、桂木さまのプロフィールを詳しく! 知れるチャンスなんだよ? 邪魔しなーい! 海斗は知りたくないのっ!?」
「桂木先輩が困ってるだろ!」
「え?」

海斗から陸に視線をうつした灯。視線の先では、稜にまわした腕に力を籠めて恐々と灯を見つめる陸がいた。

「あ、ホントだ。てへ、失敗しっぱい! 興奮しすぎちゃった! ごめんなさい、桂木さまっ! いまの質問に対する返答は後日ゆっくり聞かせていただけるとっ」
「灯」
「った! もう、頭叩くのやめてよね海斗っこれ以上馬鹿になったらどうしてくれるの」

海斗は常よりも高いテンションの灯に溜息をよこすと、びくびくと灯を見つめる陸に向き合う。緊張から染めたままの頬を指先でかいて、照れたような笑みを浮かべる。

「灯がすいません。…あ、あの、おれ橘海斗っていいます。はじめまして桂木先輩」

ほわん、と和やかな笑みを浮かべる海斗に、灯への警戒心から恐々としていた陸が視線を和らげる。

「…はじ、め、まし…て」
稜がお世話になってます。

ほわわん、と和やかな笑みを浮かべあう陸と海斗。二人の周りをお花がぽんぽん飛んでいるような錯覚に見舞われる食堂にいた生徒達。

ちなみに。
わんこが二人…ごくり。
と、灯が手を握り締めていたのは内緒である。

ほわんとした笑みをすぐに消した陸が、稜から手を離して席につくよう促す。それに笑顔を返して稜が席に着き、その隣に陸が座りさらにその隣に譲が座る。三人の迎いに座る海斗と灯。海斗は頬を染めたまま幸せそうな顔で陸をみつめているし、灯もまた海斗よりも幾分か邪まな笑顔で三人を見つめている。そしてそんな5人を眺める食堂に居る生徒達。

「陸、なに食べる?」
「…さら、だ」
「サイドメニューから選ぶんじゃねえ。定食にしろ定食」
「…のこす…」
「もっとたくさん食べないと。ちょっとずつでいいから食べる量増やそう、陸」

これはどうだ、と二人に聞かれるたびに、陸は眉尻を下げて首を横に振る。お腹は減っているが、メニューについている写真を見る限りそんなに食べれる気がしない。

三人のやりとりを眺めていた海斗が、不意に口を開く。

「か、桂木先輩って、甘いものがお好きなんですよ、ねっ?」
「、ん…、すき、」
「っぅえ、…あ、あの…なら…」

こくりと頷いて首を傾げながら呟いた陸に、ばっと首まで赤くさせた海斗。しどろもどろになりながら視線を彷徨わせて提案する。

「一品食べきるごとに、甘いもの一個追加…みたいなのはどうですか?」
「…ああ、なるほど! いいね海斗っ! 食後はスキでもそんなに食べれないだろうから…今日食べる甘いモノの量を増やすってことにしよっか。」

にこっと笑った稜に、陸が薄っすら顔を青くさせる。それはつまり裏を返せば、摂取した食事量が少なければ少ないほど甘味の量も減るって事…だよね。ごくりと唾をのむ。隣で笑ってる譲が憎たらしい。

「じゃあはい、陸! なんの定食にしよっか?」



輝くような笑顔でいう稜に、陸は力なく笑みを返した。





2010/11/14/


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