123
(陸視点)



「陸、昼飯どうする?」

背中を掴んでいた手を離して、するりと譲の体から離れる。

「稜、…ま、ってる…から、いく…」
「そういうと思った。さっさと行くか」
「、ん…」

指先が震えそうになるのをなんとか耐えて、先に歩き出した譲の後を歩き出す。細く、息を吐き出した。


―…

会長と別れてから一人で廊下を歩いていたら、後ろから声をかけられた。

「ねえ」

と、軽くかけられたそれに、周りに生徒がいなかったため俺かと思って振り返った瞬間、頭を強打されて床に転がされた。いたい、頭をおさえて小さく呻き声をもらしている間に、口笛を吹いて何人かの生徒達に空き教室に連れ込まれて。
芝生の上、とれた制服の釦、殴られた腹。
嫌な記憶。せまる無数の手をみて、喉がぎゅっと締められたように声が出なくなった。
制服に手をかけられた瞬間、絞るように出た声。その瞬間扉がガラリと開いて、譲が現れた。

そして今に至る。


……腕立て伏せでも毎日するべきだろうか…。腕力がないのは自覚していたが、立て続けにこういうことが起こると己のひ弱さに情けなくなる。譲の方が高いとはいえど、そこまで身長差はないはずなのに…。


「陸、どうした?」
「…ん、…」

自分の細い腕を見つめてから譲を追いかける。

譲の部屋に滞在する一週間、どうやって鍛えてるのか教えてもらうことにしよう。


―…


「陸、開けんぞ」

譲の言葉に、こくりと頷く。鬼門ともいえる食堂の扉を前に、譲の背に隠れている俺の姿は後ろから見たら情けないことこの上ないだろう…けど、食堂はなにが飛び出してくるかわからない、という認識なのだから仕方ない。仕方ないったら仕方ない。


ムダに大きい扉…の横の普通サイズの扉を譲が開く。大きな方の扉は昼休憩が始まる時間と終わりの時間にだけ開かれており、ちょうど殆どの生徒が昼食を食べてる時間帯は締め切られているのだ。食堂の傍が吹き抜けのエントランスホールになっているため、埃などを防ぐためらしい。そのため閉められている間は、大きな扉の横に設置されている普通サイズのほうから出入りすることになっているのだ。


俺が頷いたのを確認してから、扉を開いた譲がさっさと歩いていく。…俺の腕を掴んで。
「わ、…、ゆ、ず…」
「稜いんぞ」
「 ! 」

その言葉にぴんと背筋を伸ばす。譲に掴まれていた手を振りほどいて、逆に掴み返す。すこし急いで歩みを進めて、譲をぐいと引っ張った。目では稜の姿を探す。

居た!

「、りょ、…うっ!」
「陸っ、無事!?」

譲の手を離して、駆け寄る。ガタンと音を立てて椅子から立ち上がった稜をその勢いのまま抱き締めた。……癒される。

ぐりぐりと鼻先を稜の頭に埋めて、ほっと息を吐く。先ほど教室に行ったときもしたけれど、稜とくっついていると安心する。譲と稜の間に挟まれて寝たい。川の字幸せ。

「稜、…おまた、せ」
「うん、お疲れ陸。…無事みたいで良かった。譲くんもお疲れ」
「おお、飯食うか。この席でいいよな?」
「ん、……りょう、の友達…が、邪魔じゃない…なら」

先ほどからこちらを凝視している男の子と、やけに目を輝かせている男の子に目を向ける。小首を傾げてそういえば、身長の高い方の子がぶんぶんと首を動かした。

「か、かまわないで 「もちろんどうぞどうぞ!桂木さまは稜の隣にどうぞ!麻埼さまは桂木さまの隣で!二人で桂木さま挟む形がとってもベストだと思います!」 …。」



て、テンション高いね、稜の友達。





2010/11/13/


prev next

MAIN-TOP

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -