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(風紀委員長視点)



転入生を前に大丈夫だと頷いた稜のかわりに、陸を探しに行く。行く先々で生徒達に陸…じゃわからない可能性があるから松野を見なかったか問えば、「会長様と謎の美形はあっちに…!!…ああ、かっこよかった」ふらり、と倒れていくため、二人を追いかけるのは非常に楽だった。


早足で追いかけていけば、道順からどこに向かったかはわかった。…生徒会室、か。


生徒会室の周りは普通の教室ではなく、空き教室や風紀委員室などの特別室が多いため生徒の数が減ってくる。生徒の姿が減ってきたのを見計らって、早足から駆け足にスピードをかえる。

一つの空き教室の横を駆ける。その瞬間に、無人のはずのそこからガタンッと大きな音がして無意識に足を止めた。

「…?」

無人の空き教室から物音。しかも人気のない廊下沿いの教室…? 風紀委員の仕事っぽいな、…陸のことも気になるがあのときの松野の表情を見る限り大丈夫…だろう。
扉に近付いて耳を済ませる。声は聞こえないが、ガタガタと暴れる物音が響いている。

「…っ、…!」

ガタガタと物音しか聞こえなかった教室から、不意に小さな声が聞こえた。聞こえたと思ったときには、手が勝手に動いていた。…この、声は。


ガラッ

「てめえら、なにやってやがる」


口元を手で覆われて、床に押さえつけられる人物。黒髪が床に散らばって、もがく手足を拘束されている。俺の声に反応して、……潤んだ青い瞳がこちらを見上げた。

「ひ、…っあ、麻埼さま…!?」
「風紀委員長が、なんでこんなところに…っ!」

ざわざわと揺れる空気に、陸を拘束していた手が緩んだらしい。ばっといくつもの手を振りほどいた陸が、よろりと体を起こして手を伸ばす。


「ゆ…ず…」
「陸っ!」
「っ、ゆず、る…!」

それに駆け寄って、手を掴み返す。周りを囲っていた、陸を襲った生徒達は陸の名前に驚愕を露にした。まさか、と顔を青褪めさせる生徒達。同情の余地はない。
つい、と目を細めて生徒達を一瞥する。

「お前ら、クラスと名前を名乗れ」

制服のカラーを見る限り、全員二年生のようだ。一人ひとりの顔を覚えるために見つめる。小さく震える陸を抱き寄せて、頭を撫でた。




…これで、陸が襲われるのは二回目…か。

一回目は、神崎先輩から聞いてはじめて知った。二回目は助け出すことができたから良かったけれど…。
奥歯を噛み締める。


腕の中の体温に安堵の息を吐く。


…というかなんで陸は襲われてたんだ。松野はどうした。





2010/11/10/


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