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(第三者視点)



陸と竜の間に横たわる、気まずい沈黙。

きょろ、と目をうろうろさせる陸。ぎゅと拳を握って顔を顰める竜。

お互いに口を開いては閉じ、言う言葉を探して途方に暮れていた。沈黙の続く空間に、不意にきゅう、と小さな音が響いた。

「、…」
「…ふ、」

ばっとお腹を押さえる陸。その仕草で何の音だったのか察した竜が小さくふきだす。その笑い声に陸は耳を染めて、きっと竜を見つめた。

「…、なんだ。腹、減ってるのか…?」
「…」

顔を顰めたまま、無言で頷く。重たい沈黙は消えたけれど、なんともいえない羞恥に包まれる陸。

「珍しいな。…、そうだ」
「?」

ふいに顔を明るくさせて、生徒会室の奥に消えていく竜。そんな竜の後姿に、疑問符を浮かべる陸。しかしその疑問も、すぐに戻ってきた竜の手の中を見て消え去った。

「こんなんで悪い。昼飯食えなくなるから、ちょっとだけな」
「、…、く、れる?」
「ああ、そのために持ってきたんだろうが。食べろ」

ずい、と差し出された甘味を素直に受け取る。生徒会室に常備されているチョコレートを、奥の簡易キッチンから持ってきたらしい。

「ん、…あり、がと」

透明の包みをほどいて、指先で一口サイズのそれをつまむ。そのまま口にいれて、口内に広がる甘さに頬を緩ませた。緩んだ陸の表情に、ほっと安堵の息を吐く竜。


「か、いちょ」
「…なんだ?」

陸は室内に置いてあるゴミ箱にチョコの包み紙を捨てて、口の中で少しずつチョコを溶かしながら竜と向き合う。青い瞳に見つめられて、竜は少し身構えた。が。

「…りょ、うと、ゆず、と」
「…」
「お、昼、たべ…いく、から」
もう、行ってもいい?

こてりと、首を傾けられる。こちらの気も知らないで、と小さく落胆の溜息を吐いた竜はひとつ頷いた。

「ああ。…急に抱き締めて悪かったな…」
「ん、…」


未練なく立ち去った陸を見届けて、竜は床に座り込んだ。絨毯のお陰でふわふわなそこに、指を這わせる。そのままぐっと拳を握って、竜は己の情けなさに顔を歪めた。


「陸の、目には」

どうすれば、映れるんだろう…か。





2010/11/3/


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