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(陸視点)



……何故だか掴まれた腕が気にならなくなった。…気がした。

なんて嘘ですごめんなさい、腕離して…!

ぞわりと肌に走る悪寒にも似たそれに、肩がびくりと跳ねた。


「か、…いちょ、う…手……」

くい、と腕を引っ張る。何かいま感動しかけたけど、仕事するのは会長の…というより生徒会役員の責務だろう。いや、確かに会長自身の仕事だけじゃなくて他の役員の仕事も片付けてて、…ちょっと、その、……"どうでもいい"位置づけからはほんのちょっと上昇した…気もするけど。

「あ、ああ。わるい…っ」

ばっ、と手を離した会長。開放された腕をさすって、首を傾げる。

仕事をしたことはわかったけれど、俺に用事とは? それとも、これを告げたかっただけか?


「その、…陸」
「…?」

言いよどむ。視線を下げる会長に、ますます首が傾く。


「ムリ…させてて悪かった。一人でして、全員分片付けるキツさがわかった、気がする」

ぽつり、ぽつり。言葉を探しながら紡ぐように、会長が口を開く。いままで会長に対して抱いていたイメージと、目の前にいる会長の雰囲気がなんだか合致しない。違和感。

「…こ、れから…」
「陸?」
「して、…くれ、れば」

しかし、悪感情は感じなかった。こくりと唾をのんで、口を開く。乾いた口内からでる言葉は、途切れ途切れで聞き難い事この上ないだろう。会長は、黙って俺の言葉を待つ。

「…、か、いちょ、が…してく、れる…だけで、も…う、れし」

は、と息を吐く。会長だけでも仕事に戻ってきてくれて嬉しいのだ。会長はさすが会長になるだけあるのか、仕事がはやい。そのためいままでかかっていた負担が減るし、仕事が減れば勉強はもちろん、稜や譲といれる時間も増えるから。

やっとのことで喋り終えて、今日は喋りすぎといえるほど口を開いていたため、喉が微かな痛みを訴える。そのことに少し眉を顰めて、会長の反応がないなと顔をあげれ、ば…。

「っ!! や、…ちょ…!」
「陸…っ」

抱き締めるな、抱き締めるなってば!! なにこれいったいどういうこと…!?





2010/10/31/


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