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(陸視点)



なにこの子超怖い…!
ごくりと生唾を呑んで、ガシリと掴まれた腕を見つめる。稜から離れたくないからこの腕から逃げるわけにも行かないし、かといって腕をとられたままでいるのもいやだ。制服越しに伝わる、転入生の体温にぞわぞわと鳥肌がたつ。

「…、はな、」
「言えってば、陸…! おれと、お前の仲だろ?」

いま言いかけたんだけどな。ピリピリとした空気を放って、必死そうに叫ぶ転入生になんだか泣きそうになって、掴まれてない方の腕でぎゅうと稜をきつく抱き締めなおす。目線を譲にやれば、呆れたように苦笑を零していた。まだおれに考える余裕があることをわかっているらしい。

ぎゅうと腰に回した腕を、稜に撫でられる。うん、なんか勇気でた。

「…、腕、はな、して」
「え?」
「…い、た…い…」

ぎゅ、と眉を顰める。口をきゅっと結んでみせれば、転入生が慌てたように手を離した。

「わ、っわりぃ。痛かった、か?」
「……」

こくりと頷けば、居た堪れなさそうに俯く転入生。振る舞いはどうであれ、根は良いようだ。あまりにもしょんぼりとされるのでこちらが居た堪れなくなる。がしかし、転入生が鬼門であることには変わりない。できればあまり近付きたくない。

「…きに、してな、い。…ほんと、に。」
だから、そっちも気にしないでくれ。

乾く唇を舐めて、言葉を紡ぐ。途切れ途切れで申し訳なくなるが、喋るのは苦手なのだ。

「でも…!」

尚も言い募ろうとする転入生に、仕方なく稜から腕を離す。稜の前に出て、転入生と向き合う。

「へ、…き」

ふるりと首を横に振って転入生をじっと見つめれば、なにを勘違いしたのかものすごい勢いで転入生が飛びついてきた。ぎゃあ! と叫びそうになるのを堪える。というか驚きすぎて声が出なかった。

「陸…! よかった、おれ陸に嫌われたか心配だったんだ…!」
「・・・っ!、っ!」

どうにか逃げようと腕の中で体を捩るが、無駄に強い力の転入生に梃子摺る。それでも何とか腕から逃げ出して、追いすがる腕を横に避けることで回避する。そのまま横に逃げていけば、どんと背中が何かにぶつかった。

……壁? いやまさか、ここは俺の思い違いじゃなければ教室の扉のはず。扉にしては柔らかいそれに、嫌な予感がぞわぞわと背中をはしった。

おそるおそる、上を見上げる。

「…っ!」

ぎゃあ、今度は飛び出そうになった声に、手で口を押さえる。見上げたそこには。

「陸、」
「か、いちょ…」


生徒会長の、松野竜が立っていた。





2010/10/29/


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