112
(春風灯視点)



ぶっちゃけ悲鳴を堪えるのに今日一日の力を使い果たした気分です。


……腐男子の春風灯くんですどうもこんにちはっ!


お昼休みになってから少し、盛大なざわめきと共に現れた風紀委員長の麻埼さま。一年生の教室の並びに麻埼さまが現れただけで大事件なのに、麻埼さまと連れ立って来た人が書記の桂木さまだと判明した瞬間、余りのことに失神しそうになったのは僕だけじゃないはず! いつもは海斗と稜がボクの教室に来てくれるのを待ってるんだけど、今日に限ってこっちの教室に移動してきてよかった! ありがとう神様! ボク無宗教だけど!


キラキラしい麻埼さまの隣に、これまたキラキラしいオーラを放つイケメンが居て、それだけでも叫びたい気分だったんだよね。新しい攻めきたこれ、とか興奮してたのに! それが桂木さまだったなんてもう、あああ、鼻血ものだよねっ! 桂木さまのお顔を直に拝見できる日がくるなんて…夢見たいだ…! しかも妄そ…想像以上の美形っぷりに逆に引くよ! 引いちゃうくらいかっこいいんだもん…!

わんこ書記の素顔は男前かあ、なんてまじまじと観察していたら、王道転入生な秋月くんがやってきた。さすが王道くんなだけあって、もうすでに素顔の書記さまと出会ってるなんて知らなかったボクは、男前の正体がわんこ書記だと見抜いた秋月くんに少し感心していた。秋月君が嬉しそうに桂木さまを下の名前で! 呼びながら近付いた瞬間、びくりと肩を強張らせた桂木さまについ目を擦った。
……なんか、いま、桂木さまが可愛く見えた。あれ? とか考えてたら、麻埼さまに頼まれてやってきた生徒が稜に話しかける前に、ぱっと駆け出した稜。

男前なのにやたら仕草の可愛い桂木さまに、隣で顔を赤らめてる海斗を横目にあれれと内心首をかしげていたら、秋月くんと桂木さまの間に騎士よろしく稜が立ち塞がった。
え、まさかの地味な綺麗系×わんこ男前? なにそれ萌える。いや、二人が兄弟だって知ってるけど…。

なんて考えは、二人の間に立ち塞がる稜にがばりと桂木さまが抱きついた瞬間霧散した。兄弟でもいいじゃない…! なんかボク腐男子として新しい扉開けそう。開いちゃいそう。


うっとりと稜の髪に頬を寄せて瞳を閉じる桂木さま。秋月くんのことは完全スルーである。そんな桂木さまに、顔を見合わせて笑う麻埼さまと稜。
なんかほのぼのするなあ、あの三人。なんてぽやぽやとした気分で眺めていたら、その空間にずいっと割ってはいる第三者の姿。まあ秋月くんなんだけどね!

「稜、悪いんだけどさ。陸は今からおれと話しがあるんだ」
「ごめんね道哉、陸は今から僕とご飯なんだ」

また今度にしてくれる? いつものおっとりした姿からは考えられない、隙の無い笑みでそう言い切った稜になんだかときめいてしまった。





2010/10/27/


prev next

MAIN-TOP

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -