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(風紀委員長視点)



るん、と機嫌良さそうに隣を歩く陸を眺める。顔は無表情ながらも青色の瞳だけは嬉しそうに緩んでいて、薄く笑う。

「お腹が空いた」と耳を染めて恥ずかしそうに言った陸を思い出して気分が良くなる。初めてといっていい陸の欲求に、これも稜効果だろうかと可笑しい気分になった。ブラコン兄弟はどこにいっても健在なのだろう。


…―



「あ、麻埼さまっ!?」

キーンと甲高い声で叫んだ生徒に、背中に隠れた陸に苦笑しつつ稜を呼んでくれと頼む。叫ばれたことに驚いて俺の背中に隠れつつも、稜の教室に着いた途端瞳を輝かせ始めた陸。が、しかし。

「陸?」

おれたちが来たことによってざわりと揺れた廊下に気付いたのだろう、稜よりも先に俺たちに近付いてきた例の転入生が、陸の名前を呼びながら近付いてくる。その姿にぴくりと眉を跳ね上げた。

「やっぱり陸だ! 約束してた通り会いにきてくれたんだな!」

背中にまわりこんで明るい声で言う転入生に、陸が足を後退させる。
約束…?
陸を見やれば青い顔をして、しまったと言わんばかりの表情を浮かべていた。

「…、ちが、」
「本当は陸、会いに来てくれないんじゃないかって不安だったけど、…うたがってた自分が恥ずかしい…、ごめんな陸! 会いに来てくれてありがとな!」
「…お、れは…稜、に」
「稜? 稜がどうかしたのか?」

完璧に転入生の勢いに負けてしまっている陸は、それでも頑張って言い返そうとするがその前に言葉を遮られて口を閉ざす。
「ちがう」も「稜に会いにきた」も見事に遮られてしゅんと肩を落としている。よく回る口だな、と逆に転入生に感心してしまう。

転入生に詰め寄られて顔を青褪めさせる陸の前に立とうとした瞬間、馴染みのある声が飛び込んできた。

「陸!」
「、っりょ、う!」

黒髪を靡かせてぱっと二人の間に飛び込んだ稜に、顔を輝かせる陸。ぶっちゃけどっちが兄かわかったものじゃない、が嬉しそうな様子の陸につい苦笑が零れる。

ぎゅ、と稜を後ろから抱きすくめた陸は、そのまま頬を稜の頭に摺り寄せて瞳を閉じる。

ほうと息を吐く陸に、転入生の前ではあるが稜と顔を見合わせて笑った。





2010/10/26/


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