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(図書委員長視点)



「陸が嫌がってる? そんなわけない! おれと陸は友達なんだ! 失礼なこというと、いくら藤木でも許さない!」
「いやいや、どうみても嫌がってるよね、きみを。彼の顔色を御覧よ、あんなに青褪めてかわいそうに。」
「違う! 嫌がってるわけないんだ! だっておれ、おれ陸のことだいすきで…!」
「君が桂木くんのことを一方的に好きなだけなんじゃないかな。片想いってやつだね。友情の片想い。本当に友達なの?」

最後の疑問だけは桂木くんに投げかける。すぐさま首を何回も横に振る彼をみて、道哉がはっとしたような顔をする。
ああ、どうやら気付いてしまったようだね。そうそう、桂木くんは恐らく君のことが「照れてるんだ!」…ん?

「照れてるんだ、陸は恥ずかしがりだから!」

おお、そうきたか。鉄壁の笑顔を保ったまま頭が痛くなるおもいだった。正直あんまり関わりたくないし、今すぐ背後の扉を開いて安息の地に逃げ込みたいけれど、桂木くんの顔色が酷すぎてあまりにも哀れすぎて見捨てることが出来ない。実家の飼い犬に似てるとかそんな理由じゃないよ。たぶん。

「うん…。本当に桂木くんが照れてるように見えるなら、眼科に行くことをおすすめするよ…」
「眼科…? 藤木、おれの心配してくれてるのか…?」

遠回しに皮肉を言ってるつもりだったんだけどあれ、なにこの空気。秋月くんが感動したような雰囲気を体中から溢れさせてる。きっとあのもっさりした髪の毛がなかったら、きらきらと感動に輝く目も見れたんだろうね。どういうこと。

「ごめん、…怒鳴ったりして…。藤木がおれのこと心配してくれてるのはわかったから。な、陸!」

わあ、なんだろうこの思考回路。ここまでくるといっそ潔いというかなんというか。

「耳鼻科にもいったほうがいいね。とにかく桂木くんを離して貰えるかな?」
「え、なんでだよ。やっと陸のこと捕まえたのに!」
「彼と話したいことがあるんだ、申し訳ないけど」

にこり、穏やかに微笑む。青い顔をこちらに向ける桂木くんが、期待した表情でこっちをみている。

「おれがいたらだめなのか? おれには話せないようなことなのか?」
「うん、そうだね。彼とはいまから生徒会の仕事のことで話があるから」
「生徒会…」
「そう、生徒会」

桂木くんの細い腰をがっしり掴んでいた手を離す。あ、どうやらある程度なら意外と話は通じるらしい。なんだか宇宙人と会話してる気分。手探りなところが。


秋月くんの拘束が解かれた途端、ぴゃっと素早い動作で私の後ろに逃げ込む桂木くん。君のほうが背が高いからね、隠れ切れてないよ桂木くん。

「じゃあ陸…話が終わったらおれのところ、…きてくれるよな?」
「…い、」
「おれ教室にいるから! また、後でな陸!」

いま嫌って言いかけたよね、桂木くん。何はともあれ、台風は去ったようで安心した。

…で、桂木くん。いつまで私の後ろに隠れてる気かな?



(宇宙人を撃退したらわんこに懐かれました)





2010/10/24/


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