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(陸視点)



ぎゃあぎゃあと喧嘩を続ける三人を眺めて、こっそりと足を動かす。今のうち今のうち。逃げるが勝ちっていうか逃げたもん勝ちっていうか。とにかくこの空間から逃げ出したい。


「大体貴方たちはいつもいつもいつも道哉にくっついて! 二人いるからって両サイドを埋めて! 片方譲りなさい!」
「颯太もボクも道哉の隣がいいんだもーん!」
「そうそう、風太もボクも道哉の隣じゃなきゃだめだもーん!」
「だもんじゃありません! 貴方達、今日という今日は逃がしませんよ・・・! 徹底的に話し合いをしますから・・・ね・・・・・・、っは、この声は・・・」

やかましく言い合っていた三人がピタリと止まる。逃げようとしていたのがバレたのかと少し焦ったけれど、どうやら違うらしい。ほっと息を吐いて一安心

「道哉だ!」
「道哉がこの近くにいる!」
できないのか! いい加減に心の安息が欲しい・・・切実に・・・。


なあ・・・不思議なんだ。・・・どうしてだか俺の名前が廊下の向こうから響いて来るんだ。

睨むな副会長に補佐二人。・・・睨むな、ホントに睨むなよ。名前を呼ばれてるなんて不本意なんだからな・・・! どうして呼ばれてるかも知らないんだからな・・・!


逃げ切れなかった後悔と、彼に出会ってしまった不幸に安堵のそれではなく、重い溜息を吐き出した。





2010/10/21/


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