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(第三者視点)



更科満。
誉学園の副会長を務める生徒の名前である。

自然な茶色の髪の毛は艶やかであったし、同色の瞳もまるで蕩けるように甘く美しかった。美人、と称されるに足る美貌。副会長を務めているだけあって出来の良い頭。彼自身、己の見目や才能に絶対の自信を持っていた。
周囲を虜にする美貌、背はあるが細身な為ゴツい生徒にも小型犬のような生徒にも人気がある。
―・・・そう、己は美しいのだ、と。

会長である松野竜は男らしい容貌をしていたし、会計の藤代茜は所謂イケメンというもので、補佐の双子は愛らしい容姿をしていた。皆一様に顔は整っていたが、系統の違うそれに満は興味がなかった。ただ一人、書記の桂木陸を除いて。

すらりとした体躯は満と同じように、背は高いが細身でしなやか。夜空を切り取ったような黒髪は煌めいてすら見えた。長い前髪に遮られてよく見えない顔は、鼻や口しか見えなくとも美しい容姿をしているのだと十分に察せられるもので。そして、前髪の隙間から時折覗く青い色の瞳の美しさときたら・・・・・・、満の敵対心を煽るには十分すぎた。

周囲からチヤホヤと持て囃され続けてきた満にとって、満に匹敵するような容姿をした人間はどう考えても邪魔だったのだ。周りの関心が己に向いてないなんて、許されないとすら考えている。
小等部で満のファンだと言っていた生徒の大半が、中等部から入学してきた陸に見事に鞍替えしてしまったのだ。
陸の能力を認めているからこそ、表立って敵対はしない。それでも満は、一方的にではあるが陸のことをライバルだと認定していた。

陸が顔だけの男ではないからこそ、生徒会役員であるという仲間意識からも敵対していなかった。ということをよく理解してもらいたい。

・・・まあ、なにを言いたいのかというと。


「そこの君、そろそろ授業が始まるよ。急ぎな、さ・・・い・・・」

よく知りもしない、廊下で偶然出会っただけの生徒。それも明らかに己より上の美貌を持った生徒と遭遇して、まあ満がどう思うか、ということだ。


ちょうど陸が保健室から廊下に踏み出した一歩目で、見事に二人は出会ってしまった。





2010/10/02/


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