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(陸視点)



柔らかな声に誘われて意識が浮上していく。
心地良いまどろみ、うっすら瞼を開くと、白いカーテン越しに太陽の光が目を刺激した。外に面したカーテンが締められているのは、きっと保健医の配慮だろう。朝日が寝起きの目を焼くことはなかった。

「桂木くん、点滴終わったよ」

起きれる?と、にこにこ微笑む保健医が顔を覗き込んでくる。背後にみえる時計の時間を確認して、上半身を起こした。くらくらと寝起きによく体験する眩みを感じることなく、スムーズに起き上がる身体。寝起きの悪い自分には信じられない、点滴効果か? なんて内心で首を傾けつつ、保健医に頷き返し、靴を履いてしっかりと立ち上がった。

「・・・ありがとう、ござい・・・ます」

軽く頭を下げれば、ふわりと頭を撫でられた。あ、この人俺より背が高い。

「寝ている間に額の怪我の絆創膏張りなおしたからね。後頭部の腫れもひいてたから、強く抑えない限り痛むことはないよ。」
「・・・」

にこり、微笑む保健医。・・・わかった、この人、どことなく雰囲気が稜に似てるんだ。落ち着く理由。

「最近ケガが多いようだから、気をつけて。それに・・・生徒会はそんなに仕事が多いのかな? 寝不足なようだしね。」
ちゃんと寝ること、わかった?

小首を傾げてまるで父や母のように己に言い聞かせる姿に、何故だか嫌悪を感じなかった。寧ろ、なんだか。

「・・・はい、」


すこし、心地良い、・・・ような。


それじゃあ、いってらっしゃい。

軽やかな保健医の声に背中を押されて、とても良い気分で保健室を後にした。


・・・また来よう。





2010/09/27/


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