97
(陸視点)



部屋にあった紙袋に書類を詰め、それを片手に部屋を出る。
もちろん、机の上に幾つもの山を築いた書類を全て運べるわけがなく、とりあえず期日が過ぎているものや特に急を要するものだけを選ったのでどうにか紙袋ひとつで済んでいる。

紙とは不思議なもので、いちまい一枚はあんなに軽いというのに、いま紙袋に詰められている書類は信じられないほど重たかった。


午前七時、こんな時間に登校しているのはきっと朝練のある運動部くらいなものだろうな。斯くいう俺も、こんな早朝に登校したのは初めてだ。校舎と寮が繋がっているため、ギリギリの時間に出ても十分授業には間に合うからだ。




まあ、早く来すぎて生徒会顧問の教師がいないかもしれない、ということを失念していたけれど。やはり寝不足はダメだ。思考力が鈍る。いなかったら机の上に紙袋と・・・書置きでもしていくかな。

なんて考えながら、職員室の扉を開く。人影はちょっとしかない。

「・・・おはよう、ござい・・・ます」

お陰で声がよく響いた。驚いたようにこちらを振り返る教師たちの顔をぐるりと一周するように眺めて、目当ての人物がいることに少し驚いた。


「桂木か。早いな、なんかあったか?」

首を傾げつつこちらに歩み寄ってくる顧問。それを眺めつつ、無言で紙袋を差し出す。

「あ、ああ、・・・生徒会の書類か。いつもご苦労さん、やっぱ他の役員は仕事に復帰しないか?」

問いかけにこくりと、小さく頷く。確かに生徒会室で会計や会長の姿は見たけれど・・・。昨日稜に部屋に送られた後、暫くしてから生徒会室へ書類を取りに行ったが、その量は全く変わっていなかったからな。
そう考えながら顧問を見つめる。

「確かにあの転入生はだいぶ変わった毛色してたからなあ・・・。まあそろそろ飽きるだろう。・・・ああ、けど。」

ぶつぶつと顧問が呟く独り言。若干暗くなった顔色を見て、首を傾ける。なにかあったのか?

「あー・・・、非常に言い難いんだけどな。」
「?」

「実は・・・―」





「失礼、しました・・・」

カラリ、乾いた音を立てて職員室の扉が閉まる。閉まる直前に見えた顧問の情けない顔に、頭が痛くなるおもいだった。


「・・・また、転入生がくる、・・・?」
「新歓が終わった頃に、もう一人転入生がくる予定なんだ」


重い溜息。ああ、どうか。

「今度の、転入生・・・は・・・」



いまの彼とは正反対の性格でありますように。





2010/09/24/


prev next

MAIN-TOP

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -