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(陸視点)



あれから、情けなくも稜に連れられて書類を片手に部屋に帰った。結局、譲が保健室に戻ってくることも、俺の部屋に顔を出すこともなかった。どこに行ってしまったのだろう? 稜は委員会の仕事だと言っていたけれど、委員長である譲がわざわざかり出されたという事はそれなりの事件が起こったからだろう。書類の関係なら放課後に済ませるだろうし・・・。でも、委員長である譲がいく程の事件があったようには感じなかった。そういうときは、学園全体が特有の空気に包まれるものだ。事件が解決したとしても、その日は浮き足立つ生徒たちのざわざわした空気で。それを保健室から寮の部屋に帰るまで、一欠けらも感じなかった。

ただの、考えすぎかもしれないけれど。


稜のあの笑顔と譲の行方がひどく気になった。




片付けた書類が机の上に幾つもの山を築く。最後の一枚を一番低い山の上に重ねて、一息吐いた。
深夜零時を過ぎて、時計の針が指すのは午前四時。ようやっと仕事を終わらせて、眠くて仕方がない。けれど、この片付けた書類を教師の下へ運ばなければいけない。期日が過ぎているものもあったから、一刻も早く届けた方がいいだろう。幸い、保健室で少し寝たおかげで睡魔はそれほど酷くないから、このまま身支度をしてゆっくりしていれば・・・些か早い登校時間になってしまうが、まあいい時間になる。

イスから立ち上がって軽く伸びをする。パキパキと小気味良く鳴る背中やら首の骨。ちいさく欠伸を零して、部屋に取り付けられてるバスルームへと向かった。

その途中にある窓から差し込む微かな光。少しだけ明るくなってきた空が、窓ガラス越しに見えた。・・・俺の部屋は寮の角部屋なため、他の部屋よりも窓が多い造りになっている。


―…チチチ

窓の外から聞こえる鳥の声に、耳を澄ませる。
昼よりも低い温度が、ゆるりと肌で感じられた。目を細める。窓の外を見て、身を包む静寂を愛しく思った。





2010/09/21/


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