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(第三者視点)



「稜・・・、」

掠れた声で陸が呟く。純白の枕に沈めた頭をもぞもぞと動かして、視線を彷徨わせる。

意識的にしたのか、それとも無意識にかはわからない。稜の声を求めるように、ふらりと宙に手を浮かばせた陸。その手をぎゅっと稜が握り締める。指先からじわじわと伝わる稜の体温に、陸はほっと安堵の息を吐いた。


「・・・稜・・・」
「陸、」

氷のように冷たい陸の指先を暖めるように、両手で陸の手を包み込む。不安に、心配に顰められた眉。喉から搾り出すような陸の声に、悲しみを湛えた表情のまま稜が応える。


ギシ…

小さな音をたてるベッド。陸の手を右手に握りなおして、稜がベッドに乗り上がる。
そろそろと陸の顔を覗き込んで、稜は小さく息を呑んだ。次いで顔をくしゃりと歪める。


ぼんやりと焦点を結ばない陸の目に。
それでも稜の存在を感じてか、どこか安堵の色を浮かべる表情に。

左手で陸の頬を撫でた稜は、そのまま崩れるように陸の胸の上に顔を伏せた。陸が泣いていないのに、自分が泣くわけにはいかない・・・から。




そんな稜の背中に、片方の手をゆるりと乗せた陸には、小さな微笑が浮かんでいた。





2010/08/26/


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