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(第三者視点)



あの後。

険しい表情をしたままの高貴と別れた陸は、保険医すらいない静かな空間でひっそりと息を吐いた。道哉が転校してきて、いろいろあった。

・・・―ありすぎた、とも言えるほど。


仕事詰めで疲れた頭は、ひどい鈍痛を催している。いや、仕事以外でもいろいろ起こりすぎたのだ。もともと人と関わるのは得手ではないというのに、この短い期間で様々な人間と関わった。関わってしまった。

泣く前兆のような、震える溜息を陸は零す。


関わった人物が陸にとって好ましい人柄なら、まだいい。


ああ、と陸は目を瞑る。


道哉が話しかけてくるだけで、燃える様な嫉妬の瞳をむける生徒会役員。道哉を蔑ろにしたという理由で、陸に暴力をふるった一年の荒くれ者。

つらつらと、陸に対する悪意を滾らせる人物たちを思い浮かべる。




あとは・・・、



鬱蒼と生い茂る木々の下で襲い掛かってきた―・・・。


ぶるりと肩を震わせる。高貴にかけて貰った制服ごと己の肩を抱いて、陸は顔を俯けた。・・・あの出来事をなかったものにしたいのに、俯けた視線の先に破れた制服が見えて、泣きそうになる。



「・・・つか・・・れた・・・。」

稜に、会いたい。・・・譲にあいたい。両親にあいたい。
己の世界を形作る人たちと、触れ合いたい。


震える身体をおさえて、ゆっくりと保健室のベッドに身を沈める。




今はもう、何も考えずに眠ってしまいたかった。





2010/08/19/


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