私が今居る場所は確かヴァリアーのアジトだ。うん、アジトだ。そこで両膝ついてポカンとしてます私。だけど、おかしいなぁ。アジトがなんだか少し古くなった気がする。例えばそう、床とか年期が入ってる気がする。さっき見た時は相変わらずのピカピカだったのに。いや、今もピカピカっちゃあピカピカなんですが。
大体私がイタリアに来たのは久しぶりにスクアーロに会いに来たからで並盛メンバーもイタリアに観光ついでに来てたんだけど…何かな、ランボが十年バズーカ出してた気がする。んでもって何か五発くらい連射したのが(多分イーピンちゃんを狙ったんだと思うけど)浮かれてた私に…。てか誰も居ない廊下に居る時点でおかしいだろ。私がさっきまで居たのは客間だったし皆が居たのにいきなり一人とか気付くの遅いな私。
「てことはここは、ヴァリアーの…?」
10年後の、世界?
だとしたらみんな成長してるんだよね。ベルは26?だよね。てかスクアーロとか32分歳じゃんオヤジじゃん!…ボスは36かぁ…どうしよ、二人に会って頭バーコードになってたら。うわ、想像したら笑いが…
「ゔお゙ぉい!誰だテメェ」
「!」
背後から声が聞こえた。あ、れれ。この声ってさ、間違いなく、スクアーロだよね。うわぁ!どーしよ、ホントにバーコードだったら!!
恐る恐る後ろを振り返ると、しゃがみ込んでいたのもあって黒いブーツが見えた。が、「お゙、お前!」っていう声と共に、視界いっぱいにスクアーロが侵入してきて目が合う。…誰だバーコードとか言った奴。見て見ろ!長かった髪は更に伸びてて、前髪も伸びてた。ちょっと待って、これホントに32歳?!普通に20代でもいけるじゃん!!余計に色気でてんじゃん!!
「ゔお゙ぉい!もしかして名前かぁ!?」
「いえす!よく分かったね!」
「当たり前だろぉ!五分前まで一緒に居たんだぁ、それに昔の写真見てたからすぐ分かった………そうかぁ、それで若い俺を可愛がってくるなんざ変な事を」
「ん?どしたのスクアーロ」
「いや、何でもねぇ」
はぁあ…と前髪を掻き上げ溜息をつくスクアーロは素敵に格好いい。やべ、惚れる…ってもう惚れてますね。付き合ってますもんね。てかこっちでもまだ付き合ってんの私たち。あ、でもさっき一緒に写真見てたって言ってたからそうなんだろーなぁ。
そんな事ぼんやりと考えてるとスクアーロが「ゔお゙ぉい、名前。バズーカ何発食らったんだぁ?」と聞いてきた。5発ですよ、確か。あれ、でも2発で20年後じゃないっけ?リング争奪戦の時はランボ20歳出て来たし。いや、連射の場合は10年後に居る時間が増えるのかもしれない。てことは、5発×5分で…
「25分かぁ」
「もう10分は経ってるよ」
「そうかぁ」
それにしてもこんなに格好良くなるなんて聞いてないぞ!(そりゃまぁ誰にも分かんない事だけど!)あー、ランボに感謝しなきゃ。今度お菓子あげようっと。
「なぁ名前、」
「ん?どうした?」
「ちょっとついて来い」
「うん」
スクアーロは私を立ち上がらせて、自然と手を繋いでくれた。でもって必然的に隣を歩くことになったんだけど…ぬお、10年前とは違うな、少しはヘタレ改善できたのか。いや、ヘタレはヘタレのままみたい。耳赤いし、目が泳いでるし…10年で手を繋ぐまではいいけどその後がダメとか、まぁそんなとこも大好きだ。
「どこ行くの?」
「俺達の部屋だぁ」
「たち?」
「そうだぁ」
「ちょっと待って、達って、え?私、ここに住むの?」
「…詳しくは言えねぇが…まぁ、そんなとこだな」
もう口あんぐり。開いた口が塞がらないとはこの事か。と、その時、近くにあった部屋から泣き声が聞こえて来た。ん?泣き声?
「チッ!ぐずり始めたかぁ!」
「え、どう言うことスクアーロ?」
「いいからついてこい!」
バァン!と派手に開いた扉の中に駆け込むスクアーロは、ベビーベッドらしき、てゆうかベビーベッドに向かって行った。…ワッツ?ホワィ?何故にベビーベッド?
恐る恐る、ベビーベッドをのぞき込んだ。
そこにいたのは、可愛い赤ちゃんでした。そんでもって、私が覗き込んだ瞬間、赤ちゃんはぐするのを止めたんです。必死に、必死に私に向かって手を伸ばす姿は、とても可愛くて…
「手、ちっちゃいね」
「そりゃあ、赤ん坊だかなぁ」
「…スクアーロ、この子ってさ、」
「あ゙ぁ、俺とお前の子だぁ」
薄々勘付いてはいた。だってそうじゃないと誰との子だよ!って話じゃないか。それにしても何て奇跡なんだろう。私の未来の子供が目の前にいる。今の私はまだ生んでいないのに、触ることだって可能で…
「どうしたぁ?」
「いや、何か感動…こっちの時代の自分、よく頑張った!えらい!」
アクシデントではあったけど、来て良かった、と言えばスクアーロは辛そうに笑った。
「なぁ名前、」
「ん?なぁに?」
「俺達の未来では、お前にとって辛いことが起こるんだぁ」
「…え?」
ぽつりと呟いたスクアーロは悲しそうに目を細める。私は言われたことがよく分からなくて頭が真っ白で、
「沢田綱吉を、」
そう言い掛けたスクアーロは、ぼんっという音と共に消えた。否、私が煙に包まれたんだ。
「待って、スクアーロ!聞こえないよ!!」
煙に包まれても必死にスクアーロに手を伸ばす。やだ、いやだ、なんなの。ツナが、ツナが一体…!
その時、煙の中に手が伸びてきて、軽く顔を引っ張られた。そして、素早く頬に口付けを落とされる。
「スクっ、!」
彼は慰めのキスを送ったのだろうか。
ハロー!べいびー!
(未来のダーリン、)
(何を伝えたかったの?)
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前サイトより持ってきました。
20110517 杏里