※ヒロトがガチ宇宙人
※エログロ








真っ赤な髪に病的に白い肌。甘いマスクで紳士的。みんな口を揃えて言うのだ、「基山君は素敵」。私はその言葉を聞く度に吐き気を催すというのに。

私は知っている。彼がエイリア学園の生徒と名乗り地球侵略をしている宇宙人で、機会を伺う為にこの学校に身を潜めていることを。

彼は決まって甘いマスクで笑みを作る。

その度に顔下にある宇宙人面を引きずり出してやりたいと思ってしまう。猫被りの上手い基山ヒロトは私の友人たちを手駒にして態と近付いてくる。もしかしたら、あからさまに避けている事を気付かれたのかもしれない。
数日前の事を思い返していたら丁度昼休みが終わる時間になった。おかしいな、チャイムが鳴らない。そう言えばみんなどこに行ったのだろう。授業が始まるというのに教室には先生はおろか誰も見あたらなかった。

「どうしたの、苗字さん」

ぞわり、背中が粟立つ。振り向けばいつものように笑みを浮かべる基山ヒロトが立っていた。いつものオレンジのパーカーを着て、いるのに、何故か端に赤黒い染みが見えた。それは彼の右手に近付くにつれて大きく濃くなっていた。

「ひっ、」

手に握られていたのは、先程まで会話をしていた、友人の、

「ああこれ?あんまり引っ付いてくるから思わずへし折っちゃった」

ゴロリ、投げ出されたのは白目を剥きダラリと舌を突き出した友人の顔。首の部分は薄ピンクの肉に白い骨が覗いていて未だに赤黒い染みの原因が滲み出ていた。
途端に込み上げてくる嘔吐感に思わず口を押さえる。それを見て、基山ヒロトは上機嫌に「ごめん、君はこう言うの苦手だったよね」と笑った。

「今片付けるから、本当にごめんね」

いつもの紳士面でそれに近付くと、彼は暫し興味なさげに見つめ、「名前に嫌な思いさせるなんて、君、最低だね」と躊躇なく踏み潰した。骨が砕ける音だとか、中にあった脳味噌が嫌な音を立てて飛び散ったりだとか、同時に頭の中で友人の声が響き渡った。
へたり込んだ私はとうとう嘔吐してしまった。それを見て基山ヒロトは慌てた様子で私の傍にやってきた。「大変だ、保健室に行かなきゃ」そう言って触れようとした手を私は反射的に弾き返してしまった。「いたた」と顔を顰める基山ヒロト。私は冷や汗を通り越して硬直してしまった。ああ、私もあの肉塊になるのだと、体が泣き叫んだ。

「駄目じゃないか、ほら立って」

私の体は無事だった。寧ろ、労られていた。体に力が入らなかったのに、基山ヒロトに支えられた瞬間すくっと立ち上がった脚。そのまま保健室に向かうべく廊下へ出た。一刻も早くあの肉塊から離れたかったのかもしれない。自分の意志も手伝って扉へ向かった。

「う、あぁ、」

しかしそこは更に地獄絵図だった。廊下には壁に背中をついて座り込む生徒、教師。その体には、頭がついていなかった。自分の頭部を膝の上に抱えているのだ。

「さあ行こう」

私を抱き上げた基山ヒロトは優しく笑った。今までみたいに表面に乗せた笑みではなかった。真実を突きつけられたみたいに、真っ直ぐな笑みだった。
阿鼻叫喚の地獄絵図を抜け、保健室に辿り着く。だけどそこには見知った部屋じゃなくて、何だかおかしい。保健室、こんなに広くない。体育館程もあるその部屋に足を踏み入れれば、入り口は捻じ込まれるように消えていった。真っ白い外壁に、真っ白い椅子とテーブルが見える。そして、隣には、大きなベッド。私の頭の中で何かが、接触した。

「思い出した?」

基山ヒロトが私を背中から抱きすくめた。ふわりと香った匂いは、錆びた鉄の匂いと彼自身の匂い。眩暈がした。

「ウルビダが君を逃がしちゃって困ったよ。ご丁寧に記憶まで消しちゃってて僕を覚えてないし、」

後ろから回された手が制服に回り、襟口に掛けられた。

「でも君は分かってた。心の奥底では分かってたんだ。僕が人間じゃないって、気付いてただろう?」

背後にいるのに、基山ヒロト、いやグランが口角を上げたのが分かった。

「嬉しかったよ、名前が俺を忘れるはずがないって信じてたから」









「さあ、前みたいに家族を作らなきゃ。とりあえず十人は欲しいな」

ぺろり、見えた赤はグランの舌。視界は、赤から白へ。


20110210 杏里

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