「もしかして名前って××出身か?」

綱海が夕食後の入浴待ちの時間に口走った言葉に思わず咽せてしまった。「なっ?そうだろ!」と嬉しそうに聞いてくる。その通り私は××県民だった。どうやら日常会話で私が無意識に使っていた方言に気付いたらしい。綱海は誇らし気に胸を張り、自分と同じく入浴待ちの基山に話しかけていた。

「やっぱり名前、××出身だったぜ!俺の読みが当たったな!」

「へえ、名前って××出身だったんだ」

「うん。中学までそこに住んでたの」


なんて話から私が住んでいた場所の話が広がっていく。私は東京に来るまでは山や田んぼ、畑ばかりの場所で暮らしていた。と言っても辺鄙な場所ではなく、スーパーは近くに2軒あるしコンビニだって歩いて5分の場所にある。20分くらい自転車を走らせると駅周辺にビルが建ち並び意外と都市部だったりする。まあ、東京のように高層ビルは見受けられないけど。
でもなんで綱海は私が××出身だって分かったのだろう。そんなに有名な県ではないし、周りの県と方言が似てるから特定するのは難しいのだ。的確に当てられたことは滅多にない。

「どうして分かったの?似てる方言使う県なんて沢山あるのに」

途端に目を瞬かせてあたふたする綱海は「いや、まあその、な」と桃色の頭を乱暴に掻く。一秒置いて、至極楽しそうな笑みを零す基山が立ち上がった。「そろそろ順番が来そうだから先に行ってるね」それを聞いた綱海は更に戸惑い「なっ、ヒロト待てよ!」と椅子を勢い良く後ろに倒してしまった。

「もう何してんの、綱海」

「いや、あ、悪い」

急に歯切れの悪くなった綱海に首を傾げれば彼は何かを決意したように此方を向いた。


「いや、何か気になってよ、そんでもって調べたっつーか…」

「ふーん」

「珍しい方言だったしな!」

「そうかな?沖縄の方がよっぽど珍しいと思うけど…」

「う、」


綱海は言葉を詰まらせ、下を向いて戦慄いた。何だ何だと彼を見つめれば勢い良く顔を上げた綱海と至近距離で対面することになった。

「お前のことだから気になって調べたんだよ!」

真っ赤になった顔を見て、私の顔は同じ様に赤くなっているかもしれない。

「あ、りがと」

「お、おう」

また乱暴に頭を掻く綱海は、一度息を吸って、吐いた。


「つまり、あれだ。俺、名前のこと好きだぜ!」


顔を真っ赤にしたまま破顔する。これだから、沖縄の男は隅に置けないと思った。






どこの県かは推測してください。
杏里が方言分かる県ですよね。
20110206 杏里

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