幼児化ご都合設定


「そんじゃ、後のことは派手に頼むぞ〜」

『いやいやいや!?え!?音柱様!?』




そう言った名前の腕の中には炭治郎によく似た男の子が抱き抱えられていた。



「おれはちょうなん≠セからおろしてくれ!」




似た男の子という炭治郎本人だった。更に名前の足元には5.6才と見られる善逸・伊之助が居て名前の隊服のズボンをギュッと握っていた。



『…えっと、一応お名前聞いてもいい?』

「かまど たんじろうです!ちょうなんです!」

「…あ、あがつま、…ぜんいつ、です、」

「ガハハ!!ガァーー!!」

『伊之助!走り回らないで!』


炭治郎は行儀よく真っ直ぐに右手を上げて名前を言い、善逸は両手を胸の前で組んで気まずそうに指遊びをしながら名前を言った。伊之助に関してはまだ話せないのか擬音に近い声を上げて砂利の上を走り回る。



『…隊服まで小さくなるってどれだけ都合いい血鬼術なの…』



宇髄の説明ではなんやかんやで3人が血鬼術にかかったと言う説明をされたが、名前は混乱してほとんど聞けていなかった。聞けたのは数時間で元に戻るという事だけだった。



『…あ!禰豆子ちゃん!禰豆子ちゃんは大丈夫だよね!?』


1人では対処しきれないと判断した名前は夕方とはいえ日に当てる訳には行かない為に日陰に置いてある禰豆子の入っている箱を屋敷の日陰に移動させてコンコンと叩く。



『禰豆子ちゃん!まだ夕方なのに悪いんだけどちょっと手伝って欲しいの!』




名前がそう言うと優等生の炭治郎と善逸は名前の後に続き、箱を覗き込んだ。名前は問題児である伊之助の脇に抱えて動きを止めると禰豆子の箱をまたコンコンと叩いた。



「………ム?」

『禰豆子ちゃん!』




箱から出てきてちょこんと顔を出す禰豆子に名前は喜びの声を上げた。



『一人じゃ対処しきれなくて…!助けて欲しいの!』

「………ムー、」

『えぇ!?』




禰豆子は名前に近づくと、名前の首に手を回し抱きついた。



『ね、禰豆子ちゃん!いつもなら甘やかす所だけど状況が状況だから!』

「ねずこ…?」

「おんなのこだ…」


炭治郎は首を傾げ、善逸は子供特有のふっくらとした頬を染めた。



「ねずこはおれのいもうとで、ねずこはまだ4つだ!」

『そっ、そうなんだけど…!』

「ガァー!!」

『伊之助痛い!暴れないで!』



名前は伊之助を下ろすと、満足したのか伊之助はまたグルグルと屋敷の畳の上を走り回った。




『ど、どうしよう…、』



名前はとりあえずこの屋敷から出ないように伝えるために声をかける。



『全員集合!』

「はい!」

「はい…、」

「ムー!」

「ガハハ!!」

『伊之助も集合!』




名前は暴れ回る伊之助を持ち上げ、膝の上に乗せて座ると伊之助は少しだけ大人しくなった。



『ここのお部屋から出ちゃダメだよ?ここのお部屋でなら遊んでていいから。ね?』

「分かりました!」

「そ、そこのお庭は出ちゃ駄目…?」

『あそこの花壇までならいいよ。でもそれより奥や遠くに行っちゃダメ』




善逸は素直に頷き、炭治郎は右手を未だに上げていた。禰豆子は慣れたように畳に寝転がり、伊之助は名前を見上げた。




『伊之助はまだ言葉分からないだろうから私が抱っこしてるからね?』




名前は伊之助にそう言って、被っている猪の頭を撫でると伊之助の周りにふわふわとしたものが見えた気がした。



「おれはなにをすればいいですか!」

『え、な、なにを?そうだな…、』




善逸や禰豆子が遊んでいる中、炭治郎は名前の前に正座をしてまた右手を上げた。



『なにかしたい事とか無い?』

「したいこと…、」




炭治郎は考える様に眉を寄せると、パッと顔を上げた。



「おれはちょうなん≠セからおせわをしたい!」

『お、お世話…!?』



名前は目を見開き、とりあえず伊之助の猪の頭を取って炭治郎に髪紐を渡す。



『じゃ、じゃあ、髪の毛縛ってあげて…』

「わかった!」

「ンガァー!!」

『暴れないで!ちょっと髪の毛触るだけだから!』



暴れ回る伊之助の頭を撫でるとまた少しだけ大人しくなり、炭治郎は伊之助の髪を結い始めた。



「お、お花、」

『え?』




善逸の声が聞こえて顔を向けると、善逸は名前にタンポポを差し出していた。



『…私にくれるの?』



善逸が小さく頷くのを確認して名前が受け取り、善逸にお礼を述べる。



『ありがとう、凄く綺麗だね』

「……ウェヘ、ウェヘヘヘ、」



気持ちの悪い笑い声とは裏腹に、善逸は小さい手のひらを自分の頬に当てて両手で包み込み頬を染めながら緩ませて笑った。



『か、可愛っ、』


名前が胸を抑えると伊之助の髪を結っていた炭治郎が立ち上がり名前の顔を覗き込む。


「だいじょうぶか?」

『う、うん!大丈夫だよ。ありがとう』

「あぁ!おれはちょうなん≠セからな!」




炭治郎はへにゃりと笑って自分の小さな拳を自慢げに胸に当ててトンと叩いた。




『………もうみんなこのままで良いんじゃないかな』

「……ん、」





控えめにクイクイと隊服の袖を引かれて顔を向けると炭治郎に髪を結われた伊之助がいた。




『……本当に女の子みたいな顔してる。すっごい可愛い』




あまりの衝撃に無表情で伊之助を褒める名前に伊之助は首を傾げた。




『……わたし、頑張って四人の事養おうかな…』




なんて名前が零すと、禰豆子は賛同するかの様に右手をピンと上げた。



『……炭治郎』

「なんだ?」

『抱きしめていい?』

「えっ…、おれはちょうなん≠セからがまんできる!」

『私が抱きしめたいんだけど…、駄目?』



名前がわざとらしく落ち込むと炭治郎は慣れていないのかおずおずと両手を伸ばした。



「お、おれは、ちょうなん≠セから…、」

『うん、ありがとう、お兄ちゃん』

「っ!あぁ!」




名前は炭治郎を抱きしめ頬擦りをすると炭治郎は子供らしく擽ったそうにキャッキャッと笑った。



「おっ、俺も、抱っこして…!」

『もう!可愛いなぁ!…炭治郎交代してもらってもいい?』



控えめに、けれど瞳を輝かせて両手を伸ばす善逸に名前は炭治郎に声をかける。



『……炭治郎?』



名前の声が聞こえてるわけがないのに炭治郎は名前の隊服を離さず顔を埋める。



「……」

「………やぁぁぁぁぁあああ!代わってよおぉぉぉおお!!!」

『あ、やっぱり善逸だ』




さっきまでなりを潜めていたと思っていたが、やっぱり善逸は善逸で少し安心した名前は、炭治郎の羽織を引っ張る善逸の手を掴んで離させると炭治郎の背中をポンポンと叩く。


『炭治郎、順番こにしよ?後でちゃんと抱っこしてあげるから』

「……ん、」



静かに頷いた炭治郎を下ろすと炭治郎は私の隊服をギュッと握ったまま隣に腰を下ろした。



「ガァア〜!!」

「ぎゃあぁぁぁああ!!」

『伊之助!?』




善逸を抱っこすると、その善逸の背中に飛び付いて頭突きをかました伊之助に名前が善逸を守るように上体を捻ると更に伊之助は怒ったように地団駄を踏んだ。



「ム゛ガァ!!」

『わっ、分かった!次は伊之助ね!』



何となく言葉が通じたのか伊之助はフンっと満足気に鼻を鳴らした。



『禰豆子ちゃん伊之助の事見ててくれる…?………禰豆子ちゃん!?』




禰豆子に目を向けると禰豆子は畳に寝そべり眠っていて名前は小さく溜息を吐いた。



「…くぁ…、」



炭治郎が欠伸したのに気づき名前は炭治郎の頭を撫でる。



『少しお昼寝しようか』



名前は布団を借りて数枚広げるとその上に四人を移動させ、自分も横になった。



「……また、あそんでくれるか?」

「おれもっと、あそびたい…、」

「………グガッ、」



炭治郎・善逸は眠そうな声を出しながら必死に名前に声をかけ、伊之助は既に夢の中に入っていた。




『……うん、勿論』



名前が微笑みながらそう言うと二人は安心したように瞳を閉じた。





『いやぁ〜!可愛かったなぁ!みんな!』

「……忘れてくれ、頼むから、」

「名前〜!俺と結婚したら俺の子供に会えるよ〜!!」

「俺は女じゃねぇ!!この紐うぜぇ!!」



炭治郎は恥ずかしそうに顔を多い、善逸はデレデレと顔を緩め名前に両手を伸ばす。伊之助は炭治郎に結われた髪紐を鬱陶しそうに取り、禰豆子はいつものようにニコニコと笑い、名前に抱きついた。



『また遊ぼうね!炭治郎!善逸!伊之助!』



名前の言葉に三者はそれぞれの反応を示していた。






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