炭治郎 対 善逸


「禰豆子ちゃあぁぁあん!名前ちゃぁああん!!」

『…あれ?善逸?』




名前が蝶屋敷で禰豆子とあやとりで遊んでいると善逸がダダダッと両腕を広げながら名前と禰豆子の元へと駆け寄る。



『任務帰り?おかえりなさい』

「あぁぁああぁ!!何それ!何それぇえ!?」

『え…?何かおかしかった?』

「最高すぎるぅ!!名前ちゃんにおかえりなさいって言ってもらうために任務を頑張ってるからね!!」

『……いや、そこは人の為って言おうよ…』





名前が苦笑を浮かべると夜のおかげで元気な禰豆子が名前の膝に頭を乗せる。その姿が可愛くて名前はデレデレと頬を緩ませながらサラサラの黒髪を撫でる。



「ぎゃぁあああぁぁ!!女神!!女神がいるよぉぉう!!」

『確かに禰豆子ちゃんは女神様級に可愛いよねぇ』

「名前ちゃんも可愛いよ!!」





善逸は禰豆子が体を投げ出している方とは逆の名前の隣に腰を下ろし「ウフフ〜」と良いながら体をクネクネと左右に揺らす。



『私はもうちょっと傷の完治に時間かかりそうだからまだ任務には行けないの』

「えぇ!?大丈夫!?怪我ってどれくらい!?痛い!?痛いのぉ!?」

『治りかけだから大丈夫だよ〜』




善逸はだらしなく緩めていた頬をキュッと引き締め顔を青くすると両手をアワアワと動かした。


『本当に大丈夫だよ!』

「無理しないでね…?」




そう言って善逸は涙を浮かべて不安そうに名前の顔を覗き込んだ。その表情が幼く見えて、名前の母性本能が擽られ善逸を撫でようと手を伸ばすが、善逸は立派な剣士で男の子だと思い出し、慌てて手を止めて代わりに禰豆子の髪を高速で撫でる。



「えぇ!?早くない!?禰豆子の髪の毛静電気で凄いことになってるよぉ!?」


その声に名前が手を止めると禰豆子は楽しかったのか少し残念そうにしょぼんとした。するとふわりと羽織をかけられ名前は目を見開き振り返る。



『炭治郎!』

「げっ!炭治郎…」

「禰豆子と遊んでくれてありがとう。それから善逸、げってなんだ?」

「なんでもないですよ〜…」

『私が遊んでもらってる様なものだから…。それに羽織!炭治郎が寒いでしょ?』

「夜は冷えるからな。俺は平気だから使ってくれ」

『…でも、』




炭治郎は渋る名前に優しく笑いかけると、名前が先に折れて小さく『…ありがとう』と零すと炭治郎はまた満足そうに笑った。



「だっ、だったら俺の!俺の羽織使っていいよぉ!?炭治郎のより明るい色合いだからきっと暖かいよぉ!?」

『え?…い、色合い?』

「善逸!暖かさに色合いは関係無いと思う!」

「きっ、黄色の方が暖かそうだろぉ!?」

『…………確かに?』




名前はとりあえず相槌を打つと、それに気付いた炭治郎が口を開く。



「いや!俺は山育ちだからな!俺の羽織の方が暖かい!!」

「はぁあぁ!?関係無いでしょ!そんなの!」

『あの、なんで二人は喧嘩を始めるの…?』

「名前は俺の羽織だけで十分だ!善逸は要らない!」

「その言い方だと俺が要らないみたいだろ!?訂正しろぉお!!」

「善逸は要らない!!」

「意図的過ぎるだろ!そもそも!俺が名前ちゃんと先に居たんだぞ!炭治郎こそ要らないんだよぉぉおお!!」

「俺は名前と一緒に蝶屋敷に来たんだ!俺の方が先に名前と居た!!」




ヒートアップする二人の言い合いに名前はオロオロとしながら口を挟もうとするが、禰豆子が膝で眠っているため立ち上がる事も出来ず、立って言い合いを始めた二人をただ見守る。




「それに俺の方が名前と知り合ったのは早かった!」

「それは関係無いだろぉ!?ていうか炭治郎は長男なんだろ!?長男らしく俺に譲れよぉぉぉ!?」

「俺は長男だが断る!!!」

「いやぁぁぁぁあ!!俺は炭治郎と違ってすぐに死ぬんだ!弱いからぁあ!!だから名前ちゃんは俺にくれよぉおお!!」

「嫌だ!!」

『……え?え?何の話?』



名前が首を傾げているとスパンッと勢い良く襖が引かれ、アオイが大声で二人を叱る



「うるさいですよ!!今何時だと思ってるんですか!」

『ア、アオイちゃんも声が…、』

「それに名前さんの好みの男性は水柱様のような方です!おふたりでは無理ですよ!それが分かったら寝てください!」

『…………えぇ!?アオイちゃん!?』



アオイはそれだけ言うとまたスパンッと勢い良く襖を閉めた。名前は勝手に打ち明けられた好みの男性像に顔を赤くする。



「……」

「……」




二人が静かになったと思ったら、後ろからパチパチと静電気の様な音がして名前が振り返ると、二人は俯いていたが、その雰囲気が普通では無かった。



『…ぜ、善逸?なんで放電してるの…?た、炭治郎も般若みたいな顔してるし…、』

「…名前は義勇さんのどんな所が好きなんだ?」

『す、好きっていうか…、憧れっていうか…、』

「それで?どこなの?」

『えっと…、寡黙な、所とか…?』

「つまりは俺だな?」

『え?…炭治郎?』

「あとは?あと名前ちゃんはどんな所が好きなの?」

『な、仲間想いの、所とか…?』

「それって俺だよね?」




二人は低い声のままそう言うと名前の手を片手ずつ取った。禰豆子はいつの間にか名前の背後に周り後ろから抱きついていた。



「……善逸、離すんだ」

「炭治郎こそ離せよ」

『いや、あの…?』

「名前」

『な、何?』

「名前は禰豆子の事が気に入っているんだよな?」

『え?あ、うん、可愛いし…』

「そして俺の事も好きだよな?」

『そ、そりゃあ、同じ鬼殺隊の仲間だし、好きだよ』

「じゃあ俺と結婚、」

「名前ちゃんは鬼殺隊の仲間として好きって言ったんだよ!…名前ちゃん俺の事好きでしょ?だって名前ちゃんは放っておけない子好きだもんねぇ?」

『え、あの、なんの、話をしてるの?』

「そうやって名前に甘えるな!善逸!」

「名前ちゃんは甘えられるの好きだから良いんだよ!」



二人は名前の手を握りながら睨み合い、言い合いを続ける。名前が手を引こうと力を入れると、更に二人の手に力が入り、抜けない。



『あ、あの、離して…』

「離せって言ってるぞ、善逸」

「炭治郎に言ってるんだぞ!ねぇ〜?名前ちゃん」




二人は無言で睨み合うと頬をふくらませた。



「善逸は女の子なら誰でもいいんだろう!」

「はあぁぁああ!?確かに女の子は好きだけど名前ちゃんは特別だからぁ!!」



すると二人はバッと勢い良く名前の方を向き、声を揃えて言った。



「名前は俺と善逸のどっちが好きなんだ!?」

「名前ちゃんは俺と炭治郎どっちが好き!?」

『えっと……』



名前は眉を寄せ苦笑を浮かべると、小さく呟いた。



『………げ、玄弥かな?』





この場を気に抜けるために言った名前の言葉に二人はふらりと立ち上がった。




「おい!なんだよ!!なんで追いかけて来るんだよぉ!!」




たまたま蝶屋敷にやって来た玄弥を般若の様な形相で追いかける二人が目撃されたらしい。




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