大切なものぜんぶ置いてきたのにな




「マイキー、今日はどうする?」
「…………オレはいい」
「…みんな、心配してたぞ。たまには顔出せよ」
「…うん」

あの日から15日が経った。未だに名前は眠ったままだ。オレは部屋から出る事が減って、集会にも顔を出さなくなった。

「…… 名前、」

小さく名前を呼んだ時、携帯が着信を告げた。相手を確認すると場地で、出るか迷ったけど、切れそうにない着信に諦めて通話ボタンを押して耳に当てる。

「マイキー!」
「…何だよ。集会なら、」
「名前が目を覚ましたぞ!」
「……………は、」

気付いた時にはオレは携帯を放り投げ、バイクに跨っていた。

「はぁッ、…はぁっ、」

病院に着くなり、走って病室を目指す。もう少しで名前が居るであろう病室に辿り着くという時に、後ろからずっと焦がれていた声が耳を揺らした。

『マイキー?』
「……………………」

足を止めて荒い息をそのままにゆっくりと振り返ると、車椅子に乗った名前が首を傾げてオレを見上げた。

『そんなに慌ててどうしたの?』
「………… 名前…」
『うん?なぁに?………うゎぁっ!?』

名前の驚いた様な声がすぐ近くで聞こえて、あぁ抱き締めたんだ、なんて他人事の様に思った。

『どうしたの?マイキー。今日は甘えただね?』
「… 名前、」
『だからなぁに?』
「………名前ッ、」
『もー、マイキーどうしたのー?』

笑いながらオレの背中に腕を回す名前の身体は、暖かくて柄にも無く、少しだけ泣いた。

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