高校に入学して、数週間が経った。友達も出来たし、少しずつだけど慣れ始めた。

「あれ?携帯鳴ってない?」
『あ、本当だ』

放課後になって、帰ろうってなった時にメールを告げる着信が鳴って確認すると、相手は三ツ谷君だった。どうやら学校近くまで迎えに来てくれたらしい。

『ごっ、ごめん!おまたせ!』
「走って来なくて良かったのに」

バイクに跨りながら携帯を閉じた三ツ谷君に駆け寄り、息を整える。すると崩れた私の前髪が気になったのか三ツ谷君は直してくれた。

「どう?慣れた?」
『うん。友達も出来たし、やっていけそう』
「……」
『三ツ谷君?』

三ツ谷君は少し眉を寄せると私の髪を耳にかけた。どうしたんだろうと首を傾げると、三ツ谷君は子供の様に不貞腐れた声を小さく出した。

「仕方ねーけど、やっぱ違う学校って不安だな」

思ってもみなかった言葉に呆然としていると、三ツ谷君はパッと笑みを浮かべて自分の後ろを軽く叩いた。

「乗れよ。送ってく」

何回か乗った事のある三ツ谷君のバイクに跨って腰に腕を回すと、さっきの三ツ谷君の言葉が頭に響いた。
私だって、不安が無いわけじゃない。

『……三ツ谷君、』
「どうした?」
『…………あの、……私は、…三ツ谷君が、好きだから、』

小さくなってしまった言葉に、もしかしたら聞こえなかったかも、なんて自己嫌悪に陥りながら恥ずかしさを隠す様に三ツ谷君の背中に顔を当てると、明らかに早すぎる三ツ谷君の心臓の音に顔を上げる。

『…あの、三ツ谷君、』
「別に照れてないから」
『……私まだ何も言ってないよ』

揚げ足を取るような事を言っちゃったな…、と思ったけど、後ろから見えた三ツ谷君の耳があまりにも赤いから笑ってしまった。

「わーらーうーなー」
『ご、ごめんっ、』
「……そりゃ、好きな女に言われたら嬉しいだろ」

不意打ちの返しに赤くなった顔を隠す為に俯くと、両手が軽く引っ張られてお腹に回される。

「…危ねーからちゃんと捕まっとけ」

いつもなら信号で止まる度に話したりするのに、その日は会話が殆ど無かった。けど、嫌じゃない沈黙にまた少しだけ顔が熱くなった。



back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -