肌寒くなってきた頃、親にお使いを頼まれて仕方なくスーパーに行き、牛乳やら何やらが入った重たい袋を下げながらイヤホンから流れる音楽に集中していると、突然腕が軽くなり慌てて振り返る。

『みっ、三ツ谷、君』
「重っ。結構買ったんだな」
『あ、あの、袋…』
「何聞いてんの?」

袋を返して欲しいのに三ツ谷君は歩き出してそんな話をするから、私は何とも言えない気持ちを抱えながら聞いていた曲を伝えると、驚いた様に三ツ谷君が目を見開いた。

「え、好きなの?」
『う、うん』
「…まじか。オレも好きなんだよね」

私が聞いていた曲を、まさか三ツ谷君も好きだなんて思わなかった。どのアルバムのどの曲が良かったとか、この曲おすすめ、なんて話をしているといつの間にか家に着いていた。

「あ、ここ?」
『うん。…ごめんね、荷物持たせて…』
「オレがやった事だし。気にしなくていいよ」

荷物を受け取って家の中に入ろうとした時、三ツ谷君に呼ばれて振り返ると、少し言いにくそうに口を開いた。

「あ、のさ…。その歌手のCD持ってる?」
『…ううん。持ってない』
「オレ持ってるんだけど、良かったら貸そうか?」

三ツ谷君から借りる物なんて、恐れ多過ぎて触れない気もするけど、確かに聞きたい気持ちはある。背に腹はかえられないと小さく頷く。

「なら、明日学校に持って行くよ」
『ありがとう』
「おう。じゃ、また明日」
『また明日』

何故か走り去った三ツ谷君を見送りながら、少しだけ楽しみになってしまっているのはきっと、好きな歌手のCDが借りられるからだ。




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