目をかする残像に


『……詳しくは、話せない。…ごめん』

私がそう言って頭を下げると、ドラケンは深く息を吐いた。そして私の頭に手を置くと、無でるように手を動かす。

「謝って欲しいわけじゃねぇ。オレ達だって、事情があるにせよ、オマエを忘れてたんだ。謝んのはオレらだろ」
『………謝ってもいいよ』
「調子乗んなよ」

たった数時間前までこんな風に会話していたのに、酷く懐かしい。また涙が出そうになった。私も歳かな…。

『あ、そういえばみんなはここで何してるの?』
「タイムカプセル掘ってんだよ」
『タイムカプセル?私そんなの誘われて無い』

三ツ谷君の言葉に眉を寄せると、彼はドラケンと同じ様に深く溜息を吐いた。

「埋めたのはオマエが居なくなった後」
『へぇ〜』

みんな思い思いに中身を確認している様だった。段差に腰を下ろしたドラケンは写真を持っているようだった。

「ドラケン君は何入れたんスか?」
「コレ」
「それって、東卍解散した日に撮った記念写真」

タケミチ君の言葉に重たすぎる程衝撃を受けた。東卍が解散した?なんで。どうして。私はそんなの知らない。当たり前だ。その時には私はもう居ない。けど、話自体知らない。
みんなが話している言葉が段々と遠くなる。
そもそも12年間私は何をしていた?自分の世界に帰っていないなら、あの七夕の日から私の12年間は?
私はどこまでの知識を持ってる。どこまで原作の話を知ってて、覚えている。
少なくとも東卍が解散したなんて知らない。いや、覚えていないだけかもしれない。けど、

「名前」
『っ、』

ぐるぐると考えている時、ドラケンに名前を呼ばれて我に返る。慌てて顔を向けると、ドラケンはタケミチ君を指さしていた。

「マイキー君の手紙です」
「んで、こっからはオマエ宛」

そう言ってタケミチ君は視線を手紙に落とし、ゆっくりと口を開いた。

「“必ずオマエを探し出して連れ戻す”。……って、これだけ?」

タケミチ君の不思議そうな声は私には届かなかった。まだ彼は私を探してる。連れ戻そうとしてくれている。

私を、覚えてくれている。


それだけで充分だった。少なくとも、彼は消えた私の事を覚えてくれていた。探し出そうとしてくれた。


『……あれ?』

ならどうして、この場所にあの人が居ないの?

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -