透明に満ちていく



『…ん?ドラケン?どうしたの?』

「よぉ。今日暇だろ。集会あるから来いよ」

『……今日元旦だよね?』

「あ?だから何だよ」



暴走族に元旦は関係無いのか。せっかくダラダラ過ごそうと思っていたのに。別に行かなくてもいいか、なんて思っていたら、夜になってマイキーが迎えに来た。来いよ、じゃないじゃん。行くしかない、じゃん。




「お、名前じゃん。あけおめ」

『三ツ谷君髪伸びたね。あけましておめでとう』



神社に着いてマイキーの後をついて行きながら適当に後を追っていると、突然右腕に柔らかい感触があって顔を向ける。




「名前ちゃん久しぶりっ!あけおめっ!」

『エマちゃん!あけましておめでとう!』



可愛らしく私の腕に抱きついたのはマイキーの妹であるエマちゃんだった。相変わらず本当に可愛い。



『って、エマちゃんも集会に参加するの?』

「え?駄目…?」

『若い女の子がこんな遅くまで外に居たら危ないでしょ』



多分連れて来たであろうドラケンを睨むと、エマちゃんが楽しそうに吹き出して笑った。



「名前ちゃんって時々中学生とは思えないこと言うよね!」

『え?』

「ウチら、大して歳変わらないじゃん」

『…あ、うん!そうだよね!そっか!そうだよ!』



たまに自分が中学生なのを忘れてしまう。危ない、危ない。怪しまれてしまう。人知れず冷や汗を拭き取っていると、マイキーに名前を呼ばれる。




「名前ー」




エマちゃんを1人にならないように周りに声をかけてマイキーの近くへと移動すると、彼の周りには東卍の幹部達が集まっていた。




「これからオレら流しに行くけど、名前も行こうぜ」

『え、それって夜通し?』

「うん」



頷くマイキーに眉を寄せる。いくら冬休みとはいえ夜通しは辛いな。眠くなってバイクから落ちたくないしな。そんな私の考えを読んだのか、マイキーは私の手を取って指を絡めて、可愛らしく首を傾げた。



「ちゃんとゆっくり行くし、帰りも送る」

『…そういう問題じゃ無いんだよなぁ』



それでも悩んでいると、後から来たドラケンが私達を見て少し驚いた様に目を開いてから、呆れた様に肩を落とした。




「オマエら、やっとくっついたのかよ」

「うん、そう」

『いや、違う』

「……何なの、オマエら」




私が首を振ると、繋がれていた手にギリギリと力が込められて痛みから体が跳ねた。慌ててマイキーを見ると、青筋を浮かべて笑っていた。




「…へぇー?オレ達付き合って無ぇんだ?」

『だ、だって、付き合って無いし…、っていだだっ!痛いです!』

「はァ!?いっぱいキスしたし!いっぱいエッチしたじゃん!」

『ぎゃあ!?何でそういう事言うかなァ!?』

「じゃあ何!?オレ達セフレなわけ!?意味分かんねぇ!」

『中学生がセフレとか言わないの!』

「名前だって言ってんじゃん!」




マイキーの言葉に思わず周りを見ると、ドラケンと三ツ谷君はニヤニヤしてるし、場地君を含む他のメンバーを顔を赤くして視線を逸らしていた。



『わ、たし!この後行かない!』

「何でだよッ!オレひとりで走る事になるじゃん!」

『みんなと走ればいいでしょ!もう知らん!』





マイキーの手を振り解いてドカドカと足音を鳴らしながら東卍のメンバーの間を縫って歩く。




「あれ?名前ちゃん帰っちゃうの?」

『エマちゃんごめんね!私帰る!』

「帰らねぇって」




帰る為に神社の鳥居を潜ろうとした時、手首を掴まれて腕が回され、後ろから抱きしめられる。




『……………』

「何でそんなにキレてんの?」

『下世話な話されて機嫌が良くなるわけないでしょ。というか離れてマイキー』



離れてはくれたけど、手首が掴まれて、そのまま手が下がり、手のひらが包まれる。



「本当に帰んの?」

『…………』

「帰んなよ」




眉を寄せてそう言ったマイキーに深く息を吐いて、繋がれた手を握り返すと、彼は嬉しそうに笑って私の手を引いて歩き出した。



『……ちゃんと安全運転してね』

「名前を乗せんだから当たり前だろ」



何だかんだ甘い自分に、前を歩く彼に気付かれないように小さく息を吐く。でもそんな自分が嫌じゃないから、余計に困る。




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