なな
「…苗字さんすか」
『私は苗字だけど?』
「俺狙いにするように言ったの」
『……なんの事?』
覚えはあったが影山の鋭い目付きに名前は白を切る。すると影山は少し唇を尖らせ、少し顎を引いて名前を見た。
「苗字さん、セッターっすよね」
『…なんで?』
「勘です」
半分馬鹿にして、もう半分は尊敬を感じながら名前は隠すこと無くため息を吐き出す。練習試合が終わるや否や、名前の所にドスドスと足音を鳴らしながらやって来た影山に嫌な予感を働かせながら無視する訳にも行かず声をかけると先程の会話が広げられたのだ。
『……そうだね、セッターだったよ』
「俺も、セッターです」
『知ってるよ』
「練習、教えてください」
『…影山くんに私が教えられる事は無いと思うけど』
すると影山くんは少し目を開き、首を傾げた
「なんでっすか?」
『…上手くないから。影山くんの力には…、烏野の力にはなれないよ』
「…?よく分かんないっすけど、それじゃあお願いします」
『ん〜〜〜〜?私今何語話してた?もしかして違う国の言葉話してた?』
「いや、普通に日本語でしたけど」
『嫌味だよ!わざとだよ!気づいてたけど馬鹿でしょ!?国語の点数低いだろ!』
「…?なんでキレてるんすか?」
あまりの苛立ちに声を荒らげる名前と不思議そうに首を傾げる影山を月島が外から笑っていると、不意に名前が声を荒らげるのを辞めた。
『…影山くん、ユース合宿呼ばれたんだって?』
「はい」
『そんな子に私なんかが教えられる事は無いよ。君の方が何百倍も上手いんだから』
「でも苗字さんはコーチっすよね?」
『やるって言ってないけどね!!』
「名前さ〜〜〜〜ん!!!」
体育館に高い声が響き、声の主である日向を見ると、両手でボールを頭の上で持って掲げる様に手を左右に振っていた。
「トス上げてくださ〜い!!」
『……………』
「なんでそんなに嫌そうな顔してるんすか?」
『…影山くんが上げてあげたら?』
「いや、今日は東峰さんと合わせるんで。さっきの試合で高さが足りなかったんで」
『……』
影山を睨みあげるも、特にダメージは負っておらずむしろ首を傾げていた。その間も日向は大声で名前を呼び続ける。
『……分かった分かった。上げてあげるよ』
「よっしゃ〜!!」
日向が跳ね上がり、喜んでいると影山の隣に居る名前は小さく呟いた。
『1回上げれば、わかるでしょ』
まるで言い聞かせるように前を見てそう言った名前の言葉の意味が分からず、影山はまた首を傾げた
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