よんじゅうご


「おーい、そろそろ宿に戻るぞ〜…。あ?なんで名前泣いてんだ?」

『なっ、泣いてないっ、』

「って、なんで稲荷崎の宮兄弟がここに居んだ?」





会場から出てこないのを烏養が迎えに来ると、泣いている名前を見て目を見開く。そして名前に近寄りガシガシと荒く頭を撫でる。



「はいはい、泣いてねぇ、泣いてねぇ。いいから宿に戻るぞ」

『…………ん、…………ひいっ!?』




名前は小さく頷き、手の甲で瞼を擦り顔を上げる。すると侑が額に青筋を浮かべハイライトの消えた瞳で烏養を睨んでいた。




『…あ、あつ、侑?どっ、どどど、どうしたの?』

「………もしかしてこいつが繋心くん≠ゥ?」

「………なんで俺、宮侑に睨まれてんだ?」

「しっ、知りませんよっ!」




烏養は近くに居た山口に耳打ちをすると、わざとらしくゴホンと咳をした。



「あ〜、そのなんだ…、とりあえず飯食えよ!」

「あぁ゛?」




侑は顎を上げて威嚇する様に唸ると、名前は慌てて侑に近寄って声をかける。



『ちょ、ちょっと、なんでそんなに喧嘩腰なの!』

「……はァ?俺の名前奪ったんやから当たり前やろ」

「…お前のちゃうけどな」

「………え?名前おまえ宮侑とデキてたのか?」

『デッ、デキてないっ!適当なこと言わないで!』

「そんなに否定せんでも遅かれ早かれそうなるやろ?」

『ならないよ!!』




名前は慌てて否定をすると繋心の腕をバシりと叩く。



「……尻軽」

『はっ、はァ!?』

「色んな男に尻尾振りおって!!」

『振ってないし!犬じゃないし!』

「名前は俺だけ見とけばええ言うたやろ!」

『そんな事言われた覚えないけど!?』

「言うた!さっき言いましたァ〜!!」

『しっ、知らないよそんなの!こっちはパニック状態なんだから!』

「そんなん知らんし!俺は言うた!!」

「……ガキやないんやから戻るぞ、ツム」

「あかん!!戻るなら名前も連れて帰る!」

「…それはええな」

『治も乗らないで!?』




名前が慌てて繋心の後ろに隠れると侑はまたバタバタと暴れだした。すると治が溜息を吐き出し、名前に声をかける。




「…10分だけ、時間貰ろえませんか?」

「はァ!?サム!10分も要らんわ!名前くらい1分で攫えるわ!」

「あほは黙っとれ」

「なんやと!?」





治はスっと真剣な表情になると名前を射抜く。名前はグッと唇を噛んで拳を握る。




「…10分でええから、ちゃんとツムと話してください。名前さんもツムに言いたい事あるでしょ?」

『………』

「……サム、お前…、」










「10分じゃ短いわ!!5時間くらいって言えや!!」

「そんじゃあ名前さん帰りますか?俺らも帰るんで一緒に行きましょ」

「冗談!冗談やって!サム!!」









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