さん
「名前さんはバレー経験者なんですか!?」
『……学生時代ね』
「ポジションは!?何歳からバレー始めたんですか!?バレーのどこが好きですか!?あっ!ポジションはWSですか!?もしかしてMB!?俺!俺もMBなんです!!」
『……MBじゃないし、ちょっと落ち着いてもらっていい?それに今は休憩なんだから休憩しなよ』
休憩と言われるや否や日向翔陽はダダダッと名前の前に現れて、先程の早口の質問を始めた。始め名前は驚いたが直ぐに慣れて、おざなりな態度をし始めた。けれど日向は気にした様子もなく次々と質問を飛ばす。
「俺MBなんですけど!どうやったら上手くなりますか!?」
『私はカレーが好きかな〜』
「俺もカレー好きです!それで今は影山のトスがあるから試合出れるんですけど、俺は何を練習すればいいですか!?」
『特にキーマカレーが好き』
「美味しいですよね!」
微妙に噛み合っていない会話を繰り広げていると、周りの1部の生徒を除いた部員は、苦笑を浮かべていた。
「俺!スパイク大好きなんです!」
『へぇ』
「名前さんは!?」
『苗字さんね』
「バレーのどこが好きですか!?」
『苗字ね』
「俺!エースになりたいんです!小さな巨人に!」
『………その身長で?』
嫌味を込めて名前が言うと、日向はピタリと動きを止めた。周りも名前が嫌味を含めている事に気づいたのか、田中、西谷などが額に青筋を浮かべていた。
「…身長が小さくても、小さな巨人は大エースだった」
『……』
日向は俯いて小さな声で呟くと、ゆっくりと顔を上げて鋭い目付きで名前を射抜いた。全身が粟立ち背中がビリビリと電気が走った様な衝撃に襲われる。そのまま日向は言葉を紡ぐ。
「俺は、小さな巨人になる」
ぶわりと名前の周りに黒い羽根が舞って、風が吹いた気がした。
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