よんじゅうに
「なんで苗字さんそんなに汗だくなんすか?」
『これは山より深い事情があるんだよ…』
「…?」
トイレから戻って来た影山は名前の答えに首を傾げる。
「…あ、」
『…なに?』
影山が声を上げた事に名前も膝から手を離し影山を見上げるが、影山とは視線が交わる事は無く影山は名前の後ろ、そして少し高く何かを見ていた。
『どこ見て…』
「なんで逃げんねん」
『あ、つむ、』
名前が振り返るよりも早く声が聞こえて壊れたブリキのおもちゃのようにギギギと冷や汗を流しながら振り返ると、予想通り侑が立っていた。
「ちわっす」
「さっきぶりやな飛雄くん」
侑はひらひらと影山に片手で手を振るが、もう片手はがっしりと名前の手首を掴んでいた。
「何か用すか?」
「いや、飛雄くんやなくて、
名前に用があんねん」
『あ、あの、侑、』
「…あ、苗字さん、頭にゴミが、」
影山は冷や汗をかいている名前の髪にゴミが付いている事に気づき手を伸ばす。が、その手は空を切った。
「…勝手に俺のに触んなや」
『……は、』
「「はあぁあ!?」」
名前は気づくと侑の腕の中に収まっていて、腰と後頭部に侑の手が回っていてぎゅうぎゅうと抱きしめられる。眠そうにしていた烏野の部員達も驚いた様に声を上げていた。
「苗字さんは物じゃないっすよ?一応人間です」
「一応って影山…、」
山口のツッコミも影山は聞いておらず、当の本人である影山は首を傾げる
「物やないけど名前は俺のや」
「…?でもそれなら苗字さんは
烏野のですよ?」
「…あ゛ぁ?」
影山の発言に侑は額に青筋を浮かべ顎を上げて低い声で唸る。その声に日向・山口・東峰のメンタル豆腐組が小さく悲鳴を上げる。
『…………』
この時名前は白目を向いていた。
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