よんじゅういち
「………苗字さん!?」
「なんでそんなに汗だくなんですか!?」
『はぁっ、はっ、きに、気にしない、でっ、』
谷地と清水は驚いた様に目を見開き、膝に手を付き息を荒らげる名前に声をかける。
「と、とりあえず座った方が…、」
清水の声に名前は座ろうと足を1歩前に踏み出す。
「ど、どうしてそんなに走って…」
谷地は帰り支度をしていた手を止めて、立ち上がると名前にスポーツドリンクを差し出す。名前はそれを受け取り苦笑を浮かべる。
つまり、名前は逃げたのだ。
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『………いやいやいや、え?な、何言ってんの!?』
「だから!名前が好きや言うとんねん!」
『………はぁ!?』
侑は吹っ切れた様に叫ぶ様にそう言うと名前は突然の事についていけず頭が真っ白になる。
『と、とりあえず声抑えて!!』
名前が慌てて両手を伸ばすと侑はその手を取り、名前に顔を寄せる。
『ちょ、ちょっと!近い!』
「顔真っ赤やん。……可愛ええ…」
『はぁ!?…はぁ!?そ、そんなキャラじゃなかったじゃん!!試合に負けて頭おかしくなった!?』
恍惚の表情を浮かべそう言う侑に名前は距離を取ろうと必死に手の拘束を剥がそうと躍起になるが更に力が込められる。顔を寄せてくる侑に名前は後ろへと下がり、必死に距離を稼ぐ。
『…っ、』
少し前と同じ感触が背中を襲い名前は冷や汗を流す。
『お、落ち着いてっ、』
「落ち着いとる」
侑は名前の手を離すと、両手を壁に付け名前を閉じ込める。
『やっ、やばい!この体制はやばいって!言い訳出来ないよ!?しかも壁ドンって!壁ドンは漫画の世界だから許されるだけであり!現実では許されない行為だよ!?』
「…名前、」
『うぎぃ〜…!!顔がっ!顔の良さがこの状況を現実でも許してしまうというのか…!?』
名前は侑の胸元に手を置いて押し返すが、侑も引くことはなく距離は広がらない。
『あっ、侑は私の事殺したくなる程憎いんじゃないの!?』
「憎いわ。俺の傍から居らんくなる名前は憎い」
『え、え?』
「他の男と笑いおうてる姿見るだけで殺したくなるわ」
『こっ、怖いっ!……おかしい!おかしいよ!?さっきまでのシリアスっぽい雰囲気どこ行った!?』
「なんで俺以外を応援しとん。名前は俺だけ応援しとったらええねん」
侑はするりと名前の頬を撫でる。その手が妙に厭らしくて名前は身の危険を感じ全身の力を込めて侑を押し退ける。
「うぉっ!!」
突然の事もありよろける侑の隣を猛ダッシュして名前は階段を駆け下りて人の並を避けながら走って烏野が居るここへと逃げてきたのだった。
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