さんじゅうろく
侑の目には名前が映っていた。
日向・影山にインハイで潰すと宣戦布告をし、終わりの挨拶をして顔を上げた時、真っ先に名前が目に入った。
『………』
名前の瞳には侑は映っておらず、真っ直ぐに烏野のメンバーを見つめていた。それが、妙に腹立たしかった。
「………」
侑はスっと瞳を閉じ、息を吐き出してゆっくりと瞳を開く。
「…名前、」
瞳を開くと名前と視線が交わった。その瞬間グッと目の奥が焼ける様に熱くなり、喉元が痛い。堪えるためにギュッと唇を噛んで手のひらを握る。
いつだって、敗北というものは酷く痛いのだ。
*****
『………あ、』
「…………………ちっ、」
試合が終わり、飲み物を買う為に侑が歩いていると目の前から名前が現れて舌打ちが漏れる。
『……えっと、お疲れ様』
「………嫌味か」
『素直な言葉だよ』
名前は烏野のジャージを着ていて、それを見てさらに苛立ちが増す。侑は1人になりたくて人気の無い自販機を目指していた為に周りに人はほとんどおらず遠くの方から応援の声が小さく聞こえていた。
「……どけ」
『あ、ごめん』
名前が素直に道を譲ると、侑は1歩踏み出したがすぐに足を止める。
「………なんで烏野のトレーナーなんかやっとん」
『繋心くんに誘われたから…、というか半ば無理矢理』
「…繋心くん=H」
侑は不愉快そうに顔を顰めて1歩名前に近づいた。
「…楽しそうやなァ?男
侍らせとんのか。ええ身分やな」
『はべらせ…?』
「言うとくけどな誰もお前なんか相手にせぇへんからな」
『…さっきから何の話?』
名前は首を傾げると侑はまた1歩名前に近づく。その分名前は一歩後ろに下がってを何度か繰り返すと背中に硬い感触を覚えて振り返ろうと首を捻ろうとした時、侑に顎を掴まれる。
『っ、…な、なに、』
「逸らすな」
顎を掴まれたせいで距離が縮まった事と急な事に驚いて名前が視線を逸らそうと瞳を少し動かした瞬間
侑の強い言葉にビクリと体が揺れる。
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