さんじゅうよん
第1セットを何とか烏野が先取し、コートチェンジが行われ、稲荷崎とすれ違う。
「……おい」
『…なに?』
侑に呼び止められ、名前は素直に足を止める。そして顔を上げると侑は眉を寄せて機嫌が悪そうに名前を見下ろした。
「…俺らが速攻やったとき、お前だけ驚かへんかった」
『速攻?………変人速攻のこと?』
「……」
侑が無言の肯定をすると、名前は不思議そうに首を傾げた。
『だって侑ならやりかねないと思ってたから』
「…はぁ?」
『侑と治なら、もしかしてって思ってたし、やれると思ってたから。それだけの力量があるのを知ってる』
さも当然のように名前が答えるのに対して侑は、至極不愉快だと言わんばかりに眉を寄せて額に青筋を浮かべる。
「…お前に俺の何が分かんねん」
『……そうだね、確かに何も知らない』
「……」
『でも、』
名前は侑の目をしっかりとみて、ハッキリとした力強い言葉を紡ぐ。
『バレーが大好きで、めちゃくちゃ
強い事だけは知ってる』
「……きしょいわ」
侑は吐き捨てる様に言うと顔を背け歩き出す。それを確認して名前も烏野のベンチへと向かい歩き出す。
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