さんじゅうに
顔や体にガーゼが貼られている2人は家に帰ってからも言葉を交わすことは無く、無言で食事を終え、風呂に入った。
「………」
「……なんやねん」
布団に潜った侑に治が無言で保冷バックを差し出すと侑は眉を寄せて治を睨みあげる。
「……要らないんやったら俺が貰うで」
「……」
侑は手を伸ばして受け取ると中身を確認する。
「………は、」
中身はスポーツドリンクだった。しかし侑が驚いたのはラベルの方だった。
「…………………要らんわ」
「はぁ?」
侑は保冷バックの中にスポーツドリンクを戻すと治に押し付ける。
「…お前ええ加減にせぇよ」
治がドスの効いた声を出しても侑は気にせず布団に潜り込んでしまった。
「……知らんからな。あとで返せ言うても返さんからな」
「……」
「中にあるクッキーも俺が食うで」
「………は、」
「ちゃんと確認しとらんかったツムが悪いんやで」
体を起こした侑に治は背を向けて部屋から出て行くと侑はグッと手を握りしめる。
「……別に、要らんわ。そんなん」
そう言って侑はまた布団を被り瞳を閉じた。
*****
「………………っ、」
朝になり、目を覚ますと侑の枕元には小さな包みがあり、慌てて侑が開くと中身はクッキーでは無く、ティッシュが詰められていて喧嘩になった。
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