にじゅうなな
「今年のインハイは来れるやんな?なァ?」
『……………』
公園のベンチの前に腰に手を当て仁王立ちしている侑の前には両手を膝の上に乗せて、背筋を伸ばして視線を泳がせる名前がいた。
『……もしかしたら、その…、』
「………」
『インハイの時と、繁忙期が…、その、重なっちゃった…、かも……えへっ、』
「………」
名前は誤魔化す様に笑うけれど侑は冷たい目線で名前を見下ろす。
「………いつもそうやん」
『…侑?』
「大事な試合の時はいっつも仕事やん…」
『……』
侑が寂しそうに顔を歪めるのを見て、名前は罪悪感を感じて唇を噛み締める。けれど次の瞬間、
「俺と仕事どっちが大事なん!?」
『…………えぇ〜…』
名前の体から一気に力が抜けてベンチの背もたれにもたれ掛かる。
「どっちや!!」
『……何その面倒臭い彼女みたいなセリフ』
「面倒臭いやとぉお!?」
侑がヒステリックに近い叫びを上げていると名前の隣に治が腰掛ける。そして名前に顔を寄せる。
「それで名前さんは俺とツムと仕事どれが大事なんですか?」
『………分かった。2人ともふざけてるね?』
2人の意図に気付いた名前はジト目で2人を睨むと、侑と治はつまらなそうに唇を尖らす。
「ちっ…、もうちっと泥沼を演じるつもりやったのに」
「ツムのせいやで」
「なんでやねん!」
言い合いを始める2人を見て、2人がどうして巫山戯始めたのか、理由も気付いていた。
『…侑、治』
「なんや?」
「なんですか?」
『ごめんね』
名前が謝ると2人は顔を見合せ呆れた様に眉を下げた。
「まぁええわ。今年も春高には出るし。来年かてインハイ出るしな」
「そういう事なんで今年の春高と来年のインハイは観に来てくださいね」
『…うん、絶対行く。……ありがとう、』
「おん」
「はい」
*****
『そっか〜、準優勝かぁ…』
「次は絶対に倒したる!」
インハイが終わり、侑と治が公園に顔を出し結果を聞くと惜しくも2位だった。1位は井闥山学園だった。
「…もっと、練習せな」
「…おん」
2人はインハイが終わったばかりだというのに次の事を考えていた。そんな姿に名前は素直に尊敬した。
『……よし!今日は焼肉行くぞ!』
「焼肉…!」
『練習で壊れた筋肉を修復させる!』
嬉しそうに両手を上げる2人を見て名前はくすりと笑う。
この関係が壊れるのに時間はかからなかった。
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